あの日の春秋:カジノ事業 雲行き怪しく(2014年9月14日)

勝負に熱中するあまり、いつの間にやら夜も白々。「朝だ、徹夜!」。それをそのままペンネームにした作家がいる。阿佐田哲也さんだ▼本名の色川武大で発表した「離婚」で1978年に直木賞を受賞したが、阿佐田哲也の名前で書いた麻雀マージャン小説の方がよく知られているかもしれない。代表作「麻雀放浪記」は映画にもなった▼阿佐田さんの短編「東一局五十二本場」に、若者が麻雀プロに尋ねる場面がある。「麻雀の極意は何ですか」。百戦錬磨のプロは答える。「麻雀の、というわけじゃないが、勝負事全般にいえることがひとつあるね。自己管理ができるか、どうかだ」。腕に自信がある若者はプロに勝負を挑む。最初は勝ち続けて調子に乗るが、実は…▼麻雀に限らず、勝負事というものは、ついわれを忘れてのめり込んでしまいがちだ。「しまった」と反省して切り上げられるうちはよい。自分でどうにもならなくなったら病気かもしれない。精神疾患の一つ「ギャンブル依存症」だ▼厚生労働省研究班の推計では、同依存症の疑いがある人が国内に530万人以上いるそうだ。成人の約5%に当たる。諸外国の平均が1%前後だから飛び抜けて多い。パチンコなどが身近にあることが要因らしい▼安倍晋三政権は海外からの観光客誘致の目玉としてカジノ解禁に前のめりだ。経済効果もいいが、日本人が「自己管理」できるようになるのが先だろう。(2014年9月14日)

 特別論説委員から 安倍政権下で成立したカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法で、政府はカジノを解禁。後継の菅義偉政権も「経済の起爆剤」と位置付ける。だが、にわかに雲行きは怪しく。新型コロナ禍で海外からの誘客が見込めず、開業のめどが立たない。有力候補地の横浜市に反対派の市長が誕生。推進役の菅首相は退陣へ。さらに「カジノ利権の闇」も。担当副大臣だった秋元司被告に収賄罪などで懲役4年の実刑判決。国民のギャンブル依存症への懸念は依然、根強い。次の政権はどんなさいころを振るか。勝負はげたを履くまで分からない。(2021年9月12日)

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