米同時テロ20年 軍事偏重では平和築けぬ

 晴れ渡る秋空の下、ニューヨークにそびえ立つ超高層ビルにハイジャックされた民間機が突っ込み、瞬く間にビルが崩れ落ちた。その光景はあまりにも衝撃的で悪夢のようだった。

 2001年9月11日に起こった米中枢同時テロは3千人近い死者を出す大惨事で、世界を震撼(しんかん)させた。「真珠湾攻撃以来」の奇襲に憤った米国は「テロとの戦い」を掲げ、アフガニスタンへの攻撃に踏み切った。

 あれから20年。米国はアフガンから駐留軍を撤収し、長い不毛な戦いに終止符を打った。

 それでも世界がテロの脅威から解放されたわけではない。

 「力によって敵意が減ることはない。恐怖は与えられても本当に人々の気持ちを解かすことはできない」

 9・11テロの翌月、アフガンで人道支援を続ける医師中村哲さんが国会で語った言葉だ。自衛隊の海外派遣を急ぐ政治家を前に、明確に反対を唱えた。

■おごりが招いた失敗

 冷戦終結後、唯一の超大国となった米国は圧倒的な軍事力と民主主義で世界を導こうと試みた。だがアフガンやイラクでそのもくろみは見事に外れる。軍事力で政権を崩壊させた後、民主制の実現にこだわるあまり、現地社会に即した国家建設にはならなかったからだ。

 多民族国家で勢力争いが絶えないアフガンで中央集権国家を目指したのは無理があり、多数の民間人を巻き込む空爆も反感を買うばかりだった。イラクでは開戦の理由に挙げていた大量破壊兵器が見つからず「正義の戦い」は通用しなくなった。

 力で世界は変えられるという超大国のおごりが招いた失敗である。対テロ戦争によって米欧とイスラム社会の溝は深まり、宗教や民族の対立を背景とするテロの続発をもたらした。

 米国は国内の分断で内向きになり「世界の警察官」から退いた。バイデン大統領は「他国を作り替えるための大規模軍事作戦の時代が終わった」と語る。

 この20年から何を教訓とすべきか。テロ根絶に軍事力では限界があり、時間はかかっても、その土壌となる貧困や格差、差別の緩和が必要ということだ。

 アフガンでは早速、イスラム主義組織タリバンが暫定政権を始動させた。不安定な情勢がこのまま続けば国際テロ組織の拠点になりかねない。米軍撤退後のイラクで過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭を許したような事態は避けたい。

 米軍のアフガン撤退を批判する中国やロシアも国内にイスラム過激派のテロという火種を抱え、その動向を警戒している。

 国境を越えるテロは感染症や気候変動と同様、世界共通の課題である。国際協調なくして、その根絶は成し遂げられない。

■脱「米国追従」戦略を

 24人の邦人犠牲者を出した「9・11」は日本の安全保障政策の転換点にもなった。米国の対テロ戦争を支持し、自衛隊の海外派遣を拡大させた。アフガン戦争で後方支援を行い、イラクには復興支援で部隊を送った。

 しかし米国の誤ちは明白であり、日本が重ねた判断も厳しく検証されなければならない。

 米国の抑止力に依存する日本はこの間、米国に歩調を合わせることを最優先にしてきた。近年は中国の台頭を警戒し、防衛力の増強にも拍車が掛かる。

 確かに日米同盟は外交の基軸であり重要だが、今後は米国追従の思考から脱した戦略が求められる。米国は同盟国の懸念を振り切りアフガンから軍を撤退させた。自国第一に傾く米国との付き合い方は熟慮が必要だ。

 平和憲法を持つ日本は長年、戦争をしなかった国という信頼があり、アフガンをはじめ途上国への民生支援で評価されてきた。その強みを生かしながら外交の努力を尽くしたい。

 今は亡き中村哲さんの言葉をあらためて胸に刻むときだ。

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