かつての職場ビルが倒壊…同時テロ20年、感じる米国的民主主義の変質

 高級路線の宿泊施設や飲食店の予約サイトを運営する一休(東京)の榊淳社長(49)=熊本市出身=は、20年前の米中枢同時テロの約半年前まで、第一勧業銀行(当時)の駐在員として、倒壊したニューヨーク市の世界貿易センタービルの50階で働いていた。日米のビジネスを知る経営者の目には、テロの報復として始まったアフガン戦争や、台頭する中国との覇権争いなどを経て、米国的な民主主義や超大国中心の世界秩序が変質しつつあるようにも映るという。 

 「ニューヨークは世界最先端のビジネスを動かす人々の姿を間近で見られる刺激的な街。テロは衝撃だった」。当時、銀行を辞めた直後で米国の大学院への留学を控えていた榊さんは、カリフォルニアを旅行中にテロ発生を知り、言葉を失った。犠牲者には、第一勧銀が後に合併する富士銀行の駐在員らが数多くいた。

 テロ直後に始まったアフガン戦争は泥沼化し、米軍は8月末に現地撤退を余儀なくされた。「アフガンの人々の心は武力で動かせなかった。民主国家をつくる米国の目標は挫折し、振り出しに戻ってしまった」

 榊さんは留学後、経営コンサルティング会社に転職し、さまざまな企業の経営再建をサポートしてきた。この間、中国が商圏を拡大させ、資本の世界進出が加速する一方、米国では格差拡大や人種間の対立が先鋭化。国際社会における「世界の警察」の圧倒的な存在感は薄れた。

 米国の企業文化も一変した。グーグルアマゾン・コムフェイスブックアップルの「GAFA」に代表される巨大テクノロジー企業が台頭。「圧倒的なリーダーシップを握る、ある意味で“独裁的”な経営者が先頭に立つ企業が急成長し、サラリーマン社長が経営する日本的な企業の多くは改革が遅れた」と指摘する。

 人工知能(AI)産業では中国が米国を猛追する。「米国はシリコンバレーなど世界の知性が集まる成長エンジンとして健在だが、ビッグデータを国家や一部企業が牛耳る中国の体制はAI産業の基盤となり、新型コロナウイルス対策などで威力を発揮している」。監視カメラ網やネット検閲で個人を監視する全体主義が、米国が理想とした民主主義と対極の世界秩序を形成しつつある。

 榊さんは2013年に現在の会社に転じ、16年に社長就任。米国経験などを踏まえ、成果主義の公平な社風を目指す一方、自身も自社システムの開発者の一人として実務をこなす。経営者として目指すのは、若い世代を含めた多様な人材を活用する「ダイバーシティ経営」だ。

 自身の転機と重なったテロから20年。留学先のカリフォルニアで目の当たりにした「第2のベトナム戦争化」を懸念する反戦デモの光景が脳裏によみがえる。対テロ戦争を支持する人、しない人。さまざまな考え方を受け入れる米国らしい多様性が失われていないかと、ふと考える。 (ソウル池田郷)

関連記事

PR

開催中

第13回あんぱんパーク

  • 2021年10月21日(木) 〜 2021年10月28日(木)
  • ベイサイドプレイス博多 海側イベントスペース
開催中

第5回写遊会 写真展

  • 2021年10月15日(金) 〜 2021年10月29日(金)
  • まいなびギャラリー(北九州市立生涯学習総合センター1階)

PR