市場規模22兆円…「野蛮な成長」中国インフルエンサーに迫る規制

 【北京・坂本信博】中国で、インターネット上で影響力を持つ人気者「網紅(ワンホン)」(インフルエンサー)たちのライブ配信や動画投稿による商品の宣伝販売の市場規模が昨年、1兆3千億元(約22兆1千億円)に達したことが、研究機関の調査で分かった。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要も背景に、2025年までにさらに5倍に拡大するとの推計もある。ただ、習近平指導部は今夏からインフルエンサーの起用や宣伝販売の規制に乗り出しており、影響が懸念されている。

 中国指数研究院が発表した「2021 中国インフルエンサー新経済発展報告」によると、商品をネット上の生放送で実演販売する「ライブコマース」や会員制交流サイト(SNS)での宣伝など、インフルエンサー経済の市場規模は、過去3年で年率平均150%超のペースで急拡大。昨年末時点で、フォロワー1万人以上のインフルエンサーは国内で900万人、代理店は2万社を超えた。

 中国のインターネット利用者は10億人を突破し、全人口の7割に達している。同研究院は「職業化したインフルエンサーによるライブコマースが、中小事業者の優れた商品の販路拡大に貢献している」と分析。各種業界からの参入も相次いでおり、市場は25年までに114兆円規模に膨らむと予測している。

 中国各地にインフルエンサー養成学校も生まれており、「インフルエンサー経済は黄金期を迎えつつある」(北京の業界関係者)一方、習指導部によるIT業界や芸能界への統制強化が影を落としつつある。

 中国商務省は8月、インフルエンサーによる商品宣伝動画の規定案を公表。「消費者が通販サイトに評価や感想を投稿できるようにして、内容を公開しなければならない」「服装や印象が公共の秩序や道徳を乱すことがあってはならない」といった項目に加え、ライブ配信中は中国語を使うことも要求。規定違反があればネットの利用を制限してブラックリストに登録するとしている。

 今月2日には、中国の放送行政を担う国家広播電視総局が放送局や動画配信業者に「政治的立場が正しくなく、中国共産党と国家に反目する者」「低俗なインフルエンサー」の番組起用を禁止する通知を出した。

 中国共産党機関紙、人民日報は8日付の論評で、さまざまな分野での新たな規制や罰則の導入について「『野蛮な成長』を抑制し、産業界の健全な発展を促進するため」と強調した。ただ、若い世代に文字通り大きな影響力を持つインフルエンサーの存在を、当局も注視しているとされる。北京の業界関係者は「当局による統制や芸能人の摘発が強まっており、萎縮し始めたインフルエンサーは少なくない」と打ち明けた。

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