勧告・指示が一本化された避難指示は響いたか 記録的大雨1ヵ月

 九州を中心に8月11日から降り続いた記録的な大雨から1カ月。避難情報の発表方法が5月に見直されて以降、初めて大きな災禍を生んだ。「避難勧告」をなくし、5段階で2番目に重い警戒レベル4の「避難指示」に一本化したことで、市町村の迅速な判断につながった一方、実際避難所に身を寄せた人はごくわずか。新型コロナウイルスの影響で多様化する避難行動の実態把握の難しさや、長雨での“指示慣れ”という課題も浮き彫りにした。

 「近くの川が氾濫しそうだとテレビで知り、避難を始めた。早く準備できて良かった」。8月13日午後、福岡県久留米市の団体職員の女性(58)は雨のピーク前に避難所に向かった。既に市の大半で避難指示が出ていた。翌14日未明から早朝に、気象庁が福岡、佐賀、長崎3県に「数十年に一度の大雨」に相当する「大雨特別警報」を出した。

 以前の避難情報の制度では「避難勧告」と「避難指示」のどちらも危険な場所からの全員避難を呼び掛けるレベル4に当たるが、市町村が河川の状況などをにらみながら短時間で切り替える必要があった。住民には「違いが分からない」という戸惑いもあった。

 今回の大雨で、久留米市や佐賀県武雄市は「土砂災害警戒情報」「氾濫危険情報」などの気象情報を基に避難指示を発表。各自治体の担当者は「市民に伝わりやすくなり、ためらいなく指示を出せた」と口をそろえた。福岡、佐賀両県では死者は出なかった。

 ただ、避難所を訪れた人数はそれぞれピーク時で、久留米市826人(避難対象者数比0・26%)▽佐賀県武雄市634人(同1・31%)▽同県嬉野市236人(同0・90%)-とごく一部にとどまった。

 コロナ禍で人が集まる避難所を避け、2階以上で過ごす「垂直避難」や、親戚や知人宅に身を寄せる「分散避難」の浸透が背景にあるとみられる。このため、避難の検証の難しさや、在宅避難者への支援という新たな課題に直面している。

 降り始めからの雨量が千ミリを超えた佐賀県嬉野市。12日から避難指示を出して備えたものの、担当者は「指示が出ている期間が長引いたため重みが薄れ、避難者が増えなかった可能性はある」と懸念する。

 台風シーズンに入り、警戒は緩められない。自治体には「空振り」を恐れない判断と、住民の“避難スイッチ”を的確に押すことの両立が求められる。

 静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)は「気象情報などを機械的に避難指示に結びつけるのは一つの方法だが、頻発すれば意義が失われてしまう。自治体と気象庁などが情報共有を密にし、機を捉えた発信が重要」と指摘。東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「過去の被害例を可視化するなど、住民が実感できる情報伝達に平時から取り組むべきだ」と訴える。

(梅沢平、木村知寛)

8月の平年雨量の4倍以上

 8月の記録的な大雨は各地に甚大な爪痕を残した。気象庁によると、九州7県の9観測地点で総雨量が千ミリを超え、各県のまとめでは死者は計7人、重軽傷者は計8人。住宅被害は計6964棟に上り、福岡、佐賀、長崎、熊本4県で計43世帯91人(10日現在)が避難生活を強いられている。

 九州各地で観測史上最多の雨量を塗り替えた。ピークを迎えた8月14日には福岡、佐賀、長崎3県に「数十年に一度の大雨」に匹敵するとして「大雨特別警報」が発表された。降り始めの11日から19日までの総雨量は長崎県雲仙市1291・5ミリ▽宮崎県えびの市1267ミリ▽佐賀県嬉野市1178・5ミリ▽福岡県大牟田市1049・5ミリ▽熊本県山鹿市1043・5ミリ―など。8月の平年雨量の4倍以上になる観測地点もあった。

 (梅沢平)

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