大雨から2週間、突然燃え上がったわが家の車「浸水後は乗っていなかったが」

 九州などを襲った8月の停滞前線による豪雨。河川氾濫で被害が広がった佐賀県武雄市で、水に漬かった乗用車が水害から2週間後、突然燃え上がる火災があった。水没した車両でまれに起きる事故という。水害時は事後の車の火災リスクも要注意だ。

 武雄市を管轄する杵藤地区消防本部によると、火災が起きたのは8月28日午前7時50分ごろ。同市橘町の自営業の男性宅で、「ボン」という音がして乗用車から火が出ているのに気付いた家族が119番通報した。

 駆け付けた消防車が放水して消し止めたものの、車は全焼。けが人はなく、家屋などへの延焼も免れた。

 出火原因は調査中だが、現場は、豪雨によって14日早朝に氾濫が起きた六角川の中流域。国土交通省九州地方整備局によると、この付近では川の水が堤防を越えてあふれるなどしていた。

 全焼した車は電気自動車(EV)で、ハンドルの高さまで水に漬かったという。持ち主は「水が引いた後、動かしたことはなかった」と話しており、自然発火したとみられている。

多くは電気系統のショートが原因

 日本自動車工業会(自工会)の公式サイトにある「安全運転講座」によると、水没・浸水した車の火災の多くは、電気系統のショートが原因という。

 これはガソリン車、EV、ハイブリッド車(HV)に共通している。キースイッチ(エンジンキー)を切っても、バッテリーは接続されているので、常に電気が流れる状態のまま。このため水が引いた後、電気系統の腐食が進み、やがて配線がショートすれば自然に発火する恐れがある。EV、HVの場合、高電圧バッテリーが搭載されているので特に注意すべきだという。

 自然発火しなくてもキースイッチを入れた際、火災が起こる懸念もある。

 自工会は、車が水没・浸水したときは(1)自宅の敷地内や外部の駐車場であっても、水が引いても決して始動しない(2)路上で水に漬かり立ち往生した際、通行の妨げにならないよう車を移動させなければならないときは、シフトレバーをニュートラルの位置にして、車体を押して移動させる(3)いずれの場合も事後処置は、速やかに日本自動車連盟(JAF)などのロードサービスや自動車販売店に連絡してプロの判断に任せるよう呼び掛けている。

信号停止中に出火したケースも

 台風や豪雨で浸水した車の火災は、国土交通省が公表している自動車のリコール・不具合情報の中にさまざまな事例がある。

 2019年10月、オフロード車が信号停止中に出火。台風時に冠水路を走行したため車体下にわらくずが詰まり、高熱部に接触したことによる発火と推定した。

 同年2月、輸入車がエンジンルームから出火した原因は水没してエンジンが損傷していたのに、再始動を繰り返したことによるスターターモーターの過熱とみられている。

 18年10月、軽乗用車が駐車中に室内で出火したのは、台風時に海水に漬かり電気系統がショートしたと分析。同年8月、輸入車が豪雨の中、信号停止中にエンジンルームから出火したのも、エンジン内に水が入り始動できなくなったのに、スターターモーターを繰り返し作動させたことによる発熱が原因という。

 16年9月、HVの車両下部からの出火は、2週間前の台風で川が氾濫してタイヤの中心付近まで水に漬かり、エンジンルームに入り込んだ木の小枝などが高熱部に付着して熱せられたのが要因とみられる。

 この5年で人命に関わる事故は報告されていない。ただし、こうしたリスクが身近にあることは頭に入れておきたい。自工会は公式サイトの安全運転講座の中で「浸水・冠水思わぬ災難。車両火災のおそれあり」と題して啓発動画を公開している。「日本自動車工業会 安全運転講座」で検索を。

■危険伴う大雨時の運転

 水害後の車両火災とは別に、大雨が降る中では車の運転自体に危険が伴う。冠水した道路では、水深によってはエンジンやモーターが止まる恐れがある。

 国土交通省などは車で立ち往生したときの対処法を、水位が車の底面ぐらい▽ドアの半分ぐらい▽窓の高さぐらい▽屋根に届くぐらい-の四つに分けて紹介している。水圧でドアが開かない場合は脱出用ハンマーで窓を割るしかない。

 ただし、これは手遅れになったときの究極の手段。そんな状況に陥らないよう、大雨時には運転を控えるのが鉄則だ。

(特別編集委員・長谷川彰)

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