進むワクチン接種 楽観せずに底上げを図れ

 ワクチンが国民の半数に行き渡っても、闘いはまだ道半ばである。政府は引き続き接種を推進し、医療提供体制の拡充にも全力を傾けるべきだ。

 新型コロナウイルスのワクチンを2回接種した人の割合が国内人口の50%を超え、米国と同水準に達した。政府は1日100万回超の接種ペースを今後も維持することで、9月中には2回接種率が欧州の主要国に並ぶ6割まで伸びると見込む。

 それでも油断はできない。専門家でつくる政府のコロナ対策分科会は、理想的な2回接種率の目標を「60代以上90%、40~50代80%、20~30代75%」とする分析結果を公表している。

 接種率が目標の水準に達すると主に未接種者の間で広がる感染は抑制され、国民がマスク着用や「3密」回避といった行動を継続すれば、医療現場の逼迫(ひっぱく)解消も期待できるという。

 このハードルを越えるのは現実には容易でなく、分科会は懸念も示している。50代以下の接種率は目標を10~15ポイント下回る可能性が高く、その場合は現在と同様に緊急事態宣言などによる行動制限を要する状況が続く-との分析だ。

 変異ウイルス「デルタ株」の感染力は予想以上に強く、欧州では接種率が6割を超えても感染に歯止めがかかっていない。若い世代の接種率の伸び悩みも目立ち、国によっては接種を義務化する動きやその賛否を巡って混乱が生じている。

 国内も現状では接種完了者が高齢者に偏り、中年・若年世代の重症者や死亡者の数が高い水準のまま推移している。都道府県別では2回接種率が高い県では6割を超えている一方、沖縄など低い県は4割余と相当な開きがあるのも気掛かりだ。

 自治体が急きょ始めた若い世代に特化した接種会場づくりはさらに促進する必要がある。接種は任意であり、ワクチンの効果は万能ではないものの重症化や死亡のリスクを下げるとの医学的データが得られている。

 ワクチンが不妊につながるといったデマ情報を遮断することや、異物混入に関する調査を丁寧に行い、正確な情報を発信していくことも肝要だろう。

 政府はワクチンを希望者全員が打ち終わる時期を11月ごろと想定し、接種証明の活用を軸に行動制限を緩和する青写真を描く。ただ、希望者数が低い水準にとどまったらどうするのか、3回目の接種の必要性や実施する場合の時期をどう判断するのか、といった問題もある。

 甘い見通しの楽観論に流れる失敗を繰り返してはならない。政府は接種率の底上げを着実に進めつつ、その先の対策を慎重に練り上げてほしい。

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