今度は弾道ミサイル…軍拡路線強める北朝鮮 手をこまねく日米中韓

 北朝鮮が15日、国連安保理決議に反する短距離弾道ミサイルを約半年ぶりに発射するなど、軍事的な挑発を強めている。相次ぐ自然災害や新型コロナウイルス禍の長期化に伴い経済事情が悪化する中、制裁緩和の糸口としたい米国や韓国との対話再開のめどが立たず、しびれを切らした可能性がある。日米韓や北朝鮮の後ろ盾の中国を含めた関係各国も、北朝鮮に自制を促す妙手がなく、手をこまねいている状況だ。

 「北朝鮮は8月の韓米合同軍事演習に強く抗議しつつ、国際情勢を見ながら軍事挑発のタイミングを探っていたのだろう」。韓国政府関係者は15日、北朝鮮側の事情をこう見立てた。

 北朝鮮は1月の朝鮮労働党大会で軍事力強化を決議後、3月に弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射。弾道ミサイルは米本土が射程に入る長距離型ではなく、トランプ前大統領が事実上黙認した短距離型にとどめ、1月に発足したバイデン米政権の出方をうかがう姿勢もにじませていた。

 ただ、バイデン政権にとって「国内外の課題が山積する中、北朝鮮問題の優先順位は高くない」(日米韓協議筋)のが実情で、米朝対話の再開に向けた機運は高まらない。韓国の文在寅(ムンジェイン)政権も任期が来年5月に迫り、北朝鮮が期待していた南北経済協力事業の再開は期待薄。食料事情の悪化など深刻な経済難が伝えられる中、国威発揚に迫られる北朝鮮が米韓への配慮を続ける理由が薄まったと言えそうだ。

 北朝鮮は今回の発射に先立つ13日、国営メディアを通じて新型長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと公表。米国の北朝鮮分析サイトによると、7月下旬には寧辺(ニョンビョン)の核施設からの冷却水排出など原子炉稼働の兆候が衛星写真で捉えられたとされ、国防力強化に向けた動きを加速させていることがうかがえる。

 北朝鮮政治が専門の慶応大・礒崎敦仁教授は「北朝鮮は1月に金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が党大会で国防力強化の大号令を掛けた。国内向けに弾道ミサイルの発射実験に踏み切り、有言実行したということだ」と分析する。

 今回のミサイル発射は、日米高官が東京で北朝鮮問題などを巡って協議した日と重なり、両国は揺さぶりを掛けられた格好。米国はアフガニスタンからの米軍撤退問題の後処理に追われ、日本側も菅義偉政権の退陣が迫る中で、有効策が描けるとの期待感は乏しい。この日、ソウルで北朝鮮の非核化などをテーマに会談した文大統領と中国の王毅外相も顔に泥を塗られた格好だ。

 韓国国内では北朝鮮の今回の弾道ミサイル発射について、韓国軍が先週、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験に成功したとの報道に反発しての対抗措置との臆測がある。米朝と南北の関係が冷え込む中、韓国の聯合ニュースは「ミサイル開発の南北間競争が激化している」との懸念を示している。 (池田郷=ソウル、山口卓)

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