総裁選、鳴りを潜める派利派略 今回は自主投票に雪崩打つ派閥の事情

 17日告示、29日投開票の自民党総裁選で「派閥支配」が薄らいでいる。党内7派閥のうち、戦線に立つ岸田文雄前政調会長が率いる岸田派を除く、6派閥が事実上の自主投票とする方向。党最大の権力闘争で数の力を示し、人事で優遇を勝ち取る“派利派略”は鳴りを潜める異例の展開だ。直後に衆院選を控え、支持者らの声を無視できない議員個々人の事情を考慮せざるを得なかった上、本命不在で「勝ち馬」の見極めが難航したことが背景にある。

 16日、麻生派は河野太郎行政改革担当相か岸田氏を基本的に支持し、高市早苗前総務相への投票も容認することを決定。会合で麻生太郎副総理兼財務相は「まとめて一本にやろうとすれば会派が成り立たない。それはそれでいいんじゃないかと思っていたが、(一本化)するなという意見が大変多かった」と、トップとしての苦悩をにじませた。

 菅義偉首相が不出馬を表明した3日以降、麻生氏は派所属の河野氏か、ベテランに推す声のある岸田氏かで着地点を探ってきた。将来のリーダーとして河野氏に目をかけてきた麻生氏だが、当初はカードを温存したい構えも見せていた。予測不能な新型コロナウイルス禍で立ち往生する安倍晋三、菅両政権を支えた経験から「本格政権を担うにはまだ早い」(麻生氏周辺)との思いもあったという。

 ただ抜群の知名度を誇る河野氏に、自らの衆院選再選を託す中堅・若手の期待は想定以上だった。最終的に「やるからにはしっかりやれ」と送り出した麻生氏。16日も河野氏を推す若手らを念頭に「負けたら冷や飯を食う。やる以上は腹を決めて勝つつもりでやらなきゃいかん」と忠告も交えつつ「終わったらまとまるのがルールだ」と“戦後”の再結束も念押しした。

 最大派閥の細田派(96人)は既に高市、岸田両氏を支持すると決定。派内に影響力を残す安倍氏自ら電話をかけ、高市氏への流れをつくる一方、中堅以上には派を飛び出した高市氏への忌避感があった。派内のバランス維持に苦慮した派幹部は「俺の仕事もここまでだ」と解放感を漂わせる。

 「情勢が見えづらい。様子見で多方向に布石を打つ必要がある」。ある派閥幹部は、5派閥が首相支持で雪崩を打った昨秋の総裁選と比べ、立ち位置を鮮明にする難しさを吐露する。二階派、石原派は16日、支援候補の絞り込みを断念。石破派は、不出馬表明した石破茂元幹事長が河野氏を支援するが、派としては議員個人の対応を拘束しないことを決めた。竹下派も自主投票を選択する見込みだ。

 当選3回以下の衆院議員でつくる「党風一新の会」が従来の派閥支配に反発する場面も目立つ。各派閥が、多数を占める中堅・若手を無視できなくなっており情勢をも左右しつつある。

 とはいえ、1回目の投票で決まらず、上位2人で行う決選投票は、党員票の比重が減り、議員票が一気に重みを増すため「派閥の論理」が復活し、主導権を取り戻すと見る向きもある。

 無派閥の小泉進次郎環境相はこの日、河野氏を支援する派閥横断の会合でこうくぎを刺した。「党員の声は国民の声だ。国民の声が、国民とはかけ離れた党内力学や派閥の力学によって覆されるようなことがあってはならない」 (河合仁志、前田倫之、井崎圭)

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