首相通訳者が下宿先のおばちゃんとの交流で見た韓国

在釜山日本総領事館総領事 丸山浩平さん(56)

 20世紀の日韓関係を締めくくり、21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップを構築していく-。1998年10月、当時の小渕恵三首相とキムジュン韓国大統領は会談後に日韓共同宣言を発表した。歴史的な場面に首相通訳として携わり「日韓関係がダイナミックに変わるという期待感をみんなが持っていた」と振り返る。

 東京外国語大を卒業し、87年に外務省入省。きっかけは大学近くの古本屋で偶然読んだ外交官試験の合格体験記で、朝鮮半島や中国といった周辺国への関心があった。88年のソウル五輪下に延世大語学堂で語学研修し、朝鮮半島専門の外交官としてキャリアをスタートさせた。

 研修中の下宿生活では辞書を持って食堂に行き、韓国人学生と寝食を共にして学んだ。下宿先のおばちゃんの元気がない時は、焼酎瓶を片手に慰める韓国人学生の姿を見た。「情が深くて居心地が良い国だと思った。接した人たちは日本への複雑な感情を越えて温かく迎えてくれた」

 両国関係は共同宣言後、日韓ワールドカップをはじめ、ドラマの普及や旅行需要の拡大で改善に向かった。だが、歴史問題でたびたび対立し、2018年には韓国大法院が元徴用工訴訟問題で日本企業に賠償を命じるなど、日韓関係は国交正常化以降で最悪とされるほど冷え込んだ。

 そうした中、19年8月に釜山総領事に就任。釜山地域の関係者との懇談では「日本、九州と地理的に近く、交流の深さや関係の多様さを感じた。日韓関係が現状のままであってはならないという問題意識を感じた」と語った。一方、総領事館周辺には元慰安婦問題を象徴する少女像などが置かれた状態で「前向きな交流のためには、適切な対応が必要だ」と強く働きかけている。

 昨年から趣味の書とコラムを組み合わせた日本語と韓国語での情報発信も始めた。今夏には出会いを意味する「ほうじん」という言葉を紹介し、国籍を越えた人の縁に感謝した。下宿先のおばちゃんとは今も連絡を取り合う仲で、自身の娘もかわいがってもらった。「釜山でも多くの韓国人との出会いを通じて、日本の立場を伝えていく。日韓関係の改善に向け、釜山から努力したい」と力を込める。

(釜山・具志堅聡)

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