自民総裁選告示「衆院選の顔」へ4氏の戦略

 17日、河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4人による自民党総裁選の論戦が幕を切った。新型コロナウイルス禍により良く対処して国民にアピールし、間近に迫った衆院選で着実に結果を出す「顔」たり得る新総裁は―。党内の権力保持に思惑を巡らす派閥領袖(りょうしゅう)をはじめ、国会議員と全国の党員・党友が目を凝らす。 

人気者の支援もろ刃の剣 河野太郎氏

 河野太郎行政改革担当相は党本部での演説会を、重要課題のワクチン接種に担当閣僚として取り組んできた実績から切り出した。「1日100万回どころか、最速の日は164万回」「7月末には高齢者の2回接種もほとんどの自治体で完了」…。代名詞の「突破力」に自信をにじませつつ、「コロナ対応を、河野太郎の実行力に任せてもらいたい」と言い切った。

 会員制交流サイト(SNS)を使いこなし、世論調査では「次の首相」の最右翼に位置する河野氏。2009年総裁選のリベンジマッチでは、同じく党内きっての知名度を誇る石破茂元幹事長と小泉進次郎環境相とタッグを組んだ。「選挙の顔」を求める若手・中堅が集った陣営は、民意に近いとされる党員・党友票で優位に立ち、一気に逃げ切る戦略を描く。

 だが、「人気者同士のタッグ」ももろ刃の剣となりかねない。安倍晋三前首相を公然と批判してきた石破氏と、実力者が牛耳る党への苦言をいとわない小泉氏に眉をひそめるベテランも。身内の麻生派からも「単純な足し算にはならない」と冷めた声が漏れる。封印したものの、持論の「脱原発」への風当たりも強い。

 4人の争いとなったことで票の分散も予想され、1回目で雌雄を決する必勝シナリオには暗雲が垂れ込める。演説会後の共同記者会見で河野氏は「国民からの支持が最大の争点だ」。仮に上位2人による決選投票にもつれ込んでも、1回目で獲得した党員票を基に議員は投票行動を取るべきだ-。「談合」もささやかれる党内を鋭くけん制してみせた。

 (河合仁志、久知邦)

決選投票での勝利に照準 岸田文雄氏

 「政治家の先生にゆっくり話を聞いてもらったんは初めてじゃけえ」。岸田文雄前政調会長は演説会で、地元・広島で出会った女性から掛けられたという一節を披露し、長所と自負する「聞く力」を売り込んだ。コロナ禍の難しい社会にあって国民と信頼を紡ぎ直すには「同僚議員の皆さまのチーム力を発揮することが大きな力になる」と語り、丁寧な合意形成と寛容さを重んじる姿勢を前面に出してみせた。

 岸田陣営の戦略は、1回目の投票は何とか五分でしのぎ、国会議員票が決定的な重みを持つ決選投票に持ち込み、主要派閥をまとめて勝負を決す、だ。

 そのためには、当選同期で最大派閥の細田派出身の安倍晋三前首相と、第2派閥を率いる麻生太郎副総理兼財務相の支援が鍵を握る。17日こそ触れなかったものの、立候補を表明して以降、両氏が実績として掲げる経済政策「アベノミクス」を持ち上げる一方、アキレス腱(けん)と言える森友学園問題に関しては「再調査は考えていない」と否定し、配慮をにじませてきた。岸田派幹部は「決選投票で2人が支援に回ってくれれば、一気に『岸田総裁』の流れができる」と踏む。

 ただ、総裁選の論点の一つに「安倍、菅(義偉)両政権の総括」も挙げられている中、安倍、麻生両氏に接近するほど「守旧派」(岸田派ベテラン)のレッテルを貼られ、衆院選を前に世論から距離を置かれかねないジレンマも抱える。右派色が強い安倍氏の影が濃くなれば、岸田派の伝統的な穏健保守路線と整合性が取れなくなるとの懸念も聞かれる。

 (大坪拓也)

安倍氏後ろ盾「保守」前面 高市早苗氏

 保守色全開で、他候補とは明確に一線を画したのが高市早苗前総務相だ。演説会では「美しく強く成長する国、日本をつくる」「敵基地の無力化を可能とする法整備を」など、思想信条を共有しバックアップを受ける安倍晋三前首相をほうふつとさせる強い言葉を連発した。

 無派閥の高市氏の後見人に、細田派内で絶大な影響力を誇る安倍氏が乗り出した背景には、憲法改正などにそれほど注力してこなかった菅政治への不満が、保守層に鬱積(うっせき)しているとの危機感がある。「迫る衆院選の1票につなげるためにも、総裁選で岩盤支持層の『受け皿』をつくっておかないといけない」(細田派中堅)というわけだ。

 安倍氏は、自らの政権下で追い風を受けて当選してきた「安倍チルドレン」の携帯電話を鳴らし、17日の決起集会には派閥横断の93人が姿を見せた。「私がこけてしもうたら、(陣営関係者は)その後冷や飯が待っているかも」とユーモアも交えて決意表明した高市氏は、テレビへの露出などでさらなる支持拡大をうかがう。

 (前田倫之)

「子育て」「女性」違い強調 野田聖子氏

 「自民党の多様性を示さなければいけない」。過去3回の総裁選では出馬意欲を示しながらも、推薦人20人が集まらなかった無派閥の野田聖子幹事長代行。今回は二階派や竹下派に所属する議員の推薦も得て、初めて「壁」を乗り越えた。

 障害のある息子の育児経験から、子育て支援の重要性を訴える。女性、高齢者、障害者に重点を置いた政策を主張。「(他候補は)小さき者、弱き者、暮らしへの視点が見えない」と違いを強調する。総理総裁に就いた場合、子どもの貧困問題などを扱う「こども庁」を発足させ、女性の社会進出の旗印として閣僚半分を女性にすると熱く語る。

 ただ、推薦人確保のめどが付いたのは告示日の直前。出遅れ感は否めず、どれだけ巻き返せるのかは見通せない。陣営は「まずはテレビ番組やSNS(会員制交流サイト)で露出を増やし、野田氏の政策や人柄、思いを伝えていくしかない」と話す。

 (井崎圭)

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