同じ公共施設でのコンサート…プロはOK、市民はNGの「線引き」なぜ

 新型コロナウイルス禍で音楽イベントの中止や延期が相次ぐ中、西日本新聞「あなたの特命取材班」に福岡市の市民吹奏楽団関係者から興味深い投稿が寄せられた。「自分たちの定期演奏会は中止になった一方、プロの演奏会は行われた。同じ公共施設が会場なのに、なぜ?」。取材してみると、同市は有料の「興行」かどうかで開催の可否を判断する独自基準を設けていることが分かった。

 投稿者が所属するのは、吹奏楽団「福岡ひびきウインドオーケストラ」。団員は福岡市近郊の高校生から70代までの約50人だ。

 投稿者によると、8月6日、福岡市東区の公共施設で約1週間後に予定していた演奏会の中止を市側から伝えられた。新型コロナの感染拡大により、福岡県が5日、独自の「福岡コロナ警報」のレベルを「特別警報」に引き上げたことで、市の公共施設を順次、臨時閉館しなければならなくなったためだ。

 演奏会は昨年5月、今年5月も中止。どちらも緊急事態宣言の期間中だった。三たび開催できないことに投稿者はやりきれない思いだったが、8月20日から県が4回目の宣言期間に入ったことで、「やむを得ない」と自らを納得させた。

 ところが、だ。九州で唯一、公益社団法人日本オーケストラ連盟の正会員であるプロの九州交響楽団が同月26日、東区の同じ公共施設でコンサートを行うと聞いた。「同じ場所を使うのに、不公平ではないか」

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 そもそも原則閉館となる施設で、なぜ開催できるのか。市公民館支援課に聞くと、「興行、全国大会などのイベントは、人数制限などを行い、感染対策を徹底した上で開催可」とする市の独自基準があるとのこと。基準は今春の3回目の宣言時、そして8月以降は特別警報後に適用された。

 今回、九響はチケットを販売した一方、福岡響ウインドは無料。「興行か否か」で明暗が分かれたというわけだ。九響は国の通知に沿って、宣言が始まった8月20日までにチケットの販売を終え、開催にこぎつけた。

 異なる判断をした自治体も。北九州市の場合、同月6日までに使用する会場を予約していれば、有料か無料かを問わず9月に入っても公共施設で開催可能だ。投稿者は「私たちも感染防止の対策を徹底するつもりだった。有料かどうかでの線引きは納得いかない」。

 福岡市文化振興課の中牟田はと子課長は「市民の音楽活動が何回も中止、延期になり、厳しい状況だ」とした上で、「まず『業』として影響を受ける分野を重視しているが、プロ、アマチュアを問わない支援を検討したい」と話す。

地域経済か公平性か、市民の意見聞き判断を

 明治大の木村俊介専任教授(行政法)の話 新型コロナ特措法は「国民経済に及ぼす影響が最小となるようにする」と、その目的を明記している。「興行か否か」という自治体の判断も、これに沿っているとも言える。線引きにより、不公平感は生じてしまう。公共施設の利用について「地域経済のため興行に損害をもたらさない」か「公平性を重視すべき」かは、市民の意見を十分に聞きながら時間をかけて判断、対応すべき課題だろう。

 

「開催」判断の九響コンサートの現場では

 緊急事態宣言中の8月26日夕、福岡市東区の公共施設で開かれた九州交響楽団の演奏会「九響サマーコンサート~クラシック&アニメ・コンチェルト~」に足を運んだ。

 冒頭、「『ブラボー』などの歓声はお控えください」とのアナウンスが流れた。休憩時間はコロナ禍以前のコンサートより短縮。終了後も、時差退席で観客間の接触を減らすなどの感染対策が行われた。

 演奏会では、トムとジェリーの映像に合わせた「ハンガリー狂詩曲第2番」など8曲が披露された。夏休みも行動が制限された親子に、十分楽しんでもらえる内容だったと感じた。

 バイオリンを習う長男と訪れた福岡市内の女性(43)は「直前まで悩んだが、夏休みにどこにも連れて行けなかったので来ることを決めました。心が和んだ」と笑顔を見せた。

 コロナで公演キャンセルなどが相次ぎ、収入が激減して財政難に陥っているプロの楽団は少なくない。九響も2019~20年度は合計78の公演が中止となり、大打撃を受けた。

 九響の担当者は「演奏会が開催できるだけ昨年の宣言時よりは助かっている」としつつ、「1年半の蓄積を生かしてコロナ対策を徹底し、心を癒やす音楽を届けたい」と話した。現在まで、コンサート会場での感染者は出ていないという。

(竹中謙輔)

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