あの日の春秋:ごんぎつねの故郷に咲く彼岸花(2003年9月24日)

独りぼっちの小ギツネ・ごんは寂しくてよくいたずらをした。いたずらが過ぎて村人を怒らせた。償いに栗をそっと届け続けるごんを、そうとは知らない村人は猟銃で…。撃った後で知る。「お前だったのか、いつも栗をくれたのは」▼新美南吉作の「ごんぎつね」。悲しい最期がいろんなことを考えさせる。過去40年間の小学校の国語の教科書(3、4年)に一番多く採用されたのが、これだった▼東京都武蔵野市で「フロネーシス桜蔭社」という小さな出版社を経営する石川文子さん(42)が調べた。物語だけでも250点を数えた。調べるきっかけは国が打ち出した「ゆとりの教育」だった▼国語の教材も薄くなった。3年前まで教科書会社にいたから実感できた。心の糧が詰まっているのに、想像力を養う宝庫なのに、それでいいのかしら。「糧」「宝庫」を一度整理しておきたかった▼掲載頻度の高い20作品を一冊の本にまとめた。「大人も読み返して」と石川さん。子どものころの感動を思い出してほしいから。心のビタミンになるから。タイトルは「おとなを休もう」にした(1、2年の教科書についても本にする予定)▼新美南吉が亡くなって60年になる。29歳の生涯にたくさんの童話を残した。故郷の愛知県半田市を舞台にした「ごんぎつね」は、彼岸花が咲くころのお話だ。花は土地の人たちによって守り育てられている。今ごろ満開だろう。

 特別論説委員から 「ごんぎつね」誕生80年を記念して、半田市は2011年10月、ごんに特別住民票を交付した。ちなみに、生年月日は作品が完成した1931年10月4日。もうすぐ90歳になるごんは、今も「市民」として愛されている。この時季、同市・矢勝川堤には約300万本の彼岸花が咲き誇り、一面真っ赤に染まるそうだ。(2021年9月26日)

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