岐路に立つ対ミャンマー人事交流 日本政府「軍政寄り」の印象懸念

 【バンコク川合秀紀】日本政府が進めるミャンマーとの公的な人事交流が、2月のクーデターによる国軍支配の復活によって岐路に立たされている。他の先進諸国にない交流実績が独自のパイプ構築につながった半面、交流を続ければ軍政を間接的に容認することになるとの懸念が出ている。

 交流の深さを象徴するのが2014年から日本財団(東京)の事業として始まった国軍幹部の招請。「民主主義国家における軍の在り方を紹介する」目的で毎年8~9月ごろ、将官級約10人を招き、防衛省での研修や自衛隊基地の視察を行ってきた。

 だが、日本財団によると今年は昨年に続き中止。理由として昨年の新型コロナウイルス感染拡大に加え、今年は「軍政移管を起因とする政情不安」(広報)を挙げた。感染収束後の軍政との事業再開については、人道支援活動を続けてきた財団の発信が「思わぬ誤解につながることがあれば本意ではない」として回答せず、ミャンマー国民和解担当日本政府代表でもある同財団の笹川陽平会長が唱える「沈黙の外交」の重要性を強調した。

 防衛省報道室は「防衛交流に重要な役割を果たした」と事業を評価。他の交流は「情勢の推移を注視しつつ検討する」という。

 一方、国費留学生制度の一環として各国の行政官らを九州大などの大学に受け入れる「ヤング・リーダーズ・プログラム」では、21年度もミャンマーを対象国から除外せず継続。所管の文部科学省によるとミャンマーから行政官4人を国費で受け入れる予定で、10月にも来日するとみられる。

 プログラムは01年度創設。ミャンマーからはこれまでに省庁を含む行政官ら92人が留学した。クーデター後も継続することについて同省留学生交流室は「軍政の容認につながるとは考えていない」とし、各国のリーダー養成に貢献して人的ネットワークを構築でき「長期的な観点から意義がある」と説明する。

 これに対し、学生向け国費留学制度で来日中のミャンマー人男性は取材に「国軍が支配する政府の役人を日本が受け入れることは軍政を正当化し、支援するのと同じ」と強く批判。「クーデター前に留学を申請したのなら自ら留学をやめるべきだ」と訴えた。

 ミャンマーで人道支援に携わる日本の非政府組織(NGO)関係者は「日本として『早く民主化しろ』ともの申すチャンネルを維持するためにも官の交流は続けた方がいい」とした上で「もっと政府が前面に出て両国関係の在り方について発信すべきだ」と注文する。日本はクーデターを非難する一方で制裁などは避け「国軍寄り」との印象も広がっているだけに、より明確な戦略と説明が求められる。

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