【解説付き】部落、ネット公開は違法 「プライバシー侵害」東京地裁

 全国の被差別部落地名リストのネット公開や書籍化は「差別を助長する」として、被差別部落出身者ら234人が川崎市の出版社「示現舎(じげんしゃ)」と代表の男性らにリスト削除や出版差し止めなどを求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。成田晋司裁判長は「出身者が差別や誹謗(ひぼう)中傷を受ける恐れがあり、プライバシーを違法に侵害する」として、被告側に該当部分の削除や出版禁止、計約488万円の損害賠償を命じた。 

 一方、自ら個人情報を公にしている場合などはプライバシーの侵害を認めず、一部原告は敗訴。地名リストに掲載された41都府県のうち、関連する原告がいないことなどから佐賀、長崎を含む16県については削除や出版禁止を認めなかった。原告、被告双方が控訴する方針。

 判決理由で成田裁判長は、今なお部落差別は解消されたとは言い難く「住所や本籍が地名リストの地域内にあると知られると差別を受ける恐れがあると推認できる」とし、身元調査などを容易にする影響があると指摘。リスト公開による損失は「結婚、就職で差別的な取り扱いを受けるなど深刻で重大であり、回復を事後に図ることは著しく困難」とした。

 被告側のサイトに掲載された、全国の被差別部落出身者らでつくる「部落解放同盟」幹部の氏名、住所などのリストについても「通常他人にみだりに知られたくない私的な事柄だ」として違法性を認めた。

 原告側が、法の下の平等を定めた憲法14条に基づいて主張した「差別されない権利」については「内実は不明確」として退けた。

 判決によると、地名リストの出典は、戦前に政府の外郭団体がまとめた「全国部落調査」。5360以上の被差別部落の地名などが掲載され、被告の男性が2016年、現在地を加えた全国部落調査の画像ファイルを公開し、復刻版として出版を計画した。

 男性は「地名がプライバシーに当たるなら学問の自由を著しく制限する」と主張したが、判決は「研究の自由が制限されるとはいえず、公益目的ではないことは明らか」と退けた。男性は「詳細は書面が届かないと分からない。控訴はすると思う」と話している。

 男性がネットに掲載したリストを巡っては16年、横浜地裁などが削除や出版差し止めを認める仮処分決定を出した。原告側弁護団は「判決確定まで仮処分の効力は維持されるはずだ」としている。 (山口新太郎)

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