「一部地域名の容認」憤り 原告側「差別実態分かっていない」

 被差別部落の地名リストの公開を「違法」と断じた27日の東京地裁判決に対し、原告、弁護団の間では評価と落胆の声が入り交じった。「被告の行為に鉄ついが下された」。ある原告は「一歩前進」と受け止めた。ただ判決は原告が強く訴えてきた「差別されない権利」の侵害は一切認めず、一部地域では原告がいないことなどを理由に事実上、公開を容認した。原告側弁護士は「裁判所は差別の実態を認識しているのか」と憤った。 

 判決の言い渡しから約40分後、東京地裁前。原告側弁護団が「勝訴」の旗を掲げると、集まった数十人の関係者から拍手が湧き起こった。だが「少し説明が必要です。一部の県のリストは差し止めを認めない判断になっています」。弁護団が続けると、高揚した雰囲気は一気にしぼんだ。

 都内で開かれた原告側の報告集会と記者会見で、弁護団は「地名リストの公表は違法としており、基本的には勝利だ」としつつ、指宿昭一主任弁護士は「煮え切らない、大勝利とは言えない判決」と悔しさをにじませた。

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 「なんで…」。佐賀県の被差別部落にルーツを持つ支援者の50代男性は集会の会場で絶句した。

 佐賀県は原告が部落出身者だという「証拠がない」として、事実上公開を禁止しなかったからだ。「差別をしてはいけない」と地名リストの存在を全否定するような明確な司法判断が出ると期待していた男性は「判決には納得できない」とうつむいた。

 弁護団がプライバシー権や名誉権に加え、強く主張していたのが、法の下の平等を定めた憲法14条に基づく「差別されない権利」の侵害だ。判決は差別されない権利について「内実が不明確」と歯牙にもかけなかった。

 出身者であることを公表し、広く知られている人に対するプライバシー権の侵害を認めなかったことに関し、山本志都弁護士は「差別というものをどう考えるのか、裁判所にはその基本がない」。全国の被差別部落出身者らでつくる「部落解放同盟」の片岡明幸副委員長も「リスト自体が差別を助長し、生むということを裁判所は認めていないと感じた。絶対におかしい」と強調した。

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 リストの削除や出版差し止めを認めたこれまでの仮処分決定では、実質的に差別されない権利を認めるような判断も出ている。

 横浜地裁相模原支部は2017年7月の決定で、リストにより出身者であることを示されるのは「差別的取り扱いを受けるかもしれないという懸念を増大させ、平穏な生活を脅かすものとなる」と指摘。その上で「差別行為を受けることなく円滑な社会生活を営む権利を侵害する」とした。

 差別されない権利を訴える原告側の思いは、壮絶な差別の歴史と社会に根深く残る差別意識を抜きには語れない。

 1970年代、今回のリストと同種の書籍「部落地名総鑑」がひそかに多数の企業に販売、購入され、被差別部落の出身者の身元調査に利用されていたことが発覚した。「交際や結婚相手が出身者かどうか気になる」。法務省の国民意識調査(19年度)では、部落差別を知っている人の15・8%が差別意識をにじませた。

 「被差別部落に住んでいるのは原告だけではないのに、個人の評価で一部の地域を差し止めの対象外とするのは理解できない。リストは原告がいてもいなくても差別を助長するのに」。解放同盟の西島藤彦書記長は会見で語気を強めた。

 指宿弁護士は「部落差別の実態を認識しているならば、もう一歩踏み込んだ判決になったはずだ。差別されない権利を認めないとまずいという認識が社会に浸透していない」と語り、判決を機に議論を活発化させるよう促した。 (森亮輔、山口新太郎)

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