「被害者を思うと、ぶちのめしたくなるときがある」それでも保護する

 孤独をこえて6

 更生保護施設を運営するNPO法人理事長工藤良さん 妻優希さん

 祖母と母親に続いて、覚醒剤にはまった少女。親から犬小屋に入れられ、外では首輪を着けて歩かされた少年―。非行の陰に横たわる、想像を絶する環境に聞き慣れることはない。

 福岡県田川市で更生保護施設を運営する。賃貸アパートで始めたボランティア時代から数えると16年。少年院を出て、20歳までの保護観察中の子が、就労など自立に向けて生活する。全国103カ所ある施設で少年少女に特化するのはここだけ。定員男子10人、女子4人で「空き」は珍しい。

 男子は重い罪を犯したり、何度か少年院を経験したりした子が少なくない。他の施設に断られ、行き場がない子もいる。「断らない」が工藤流。良さんは「事件を起こす前、苦しいときに学校や地域で何かしてやれなかったかと悔しく、もどかしい。だから自分たちは見て見ぬふりはしない」。「知った責任がある」と優希さんも言葉を添える。

 施設の小さな事務室で最初の面接をする。「俺たちは今までの大人とは違う」。2人っきりで良さんは伝える。「子どもは感受性が強い。緊張したり、ひるんだりすれば見抜かれる。同じ生き方をしてきたから分かる」

 元暴走族総長の良さん。小学2年で両親が離婚。母がいない夜、電話番号案内「104」にかけ、オペレーターの声を聞いて寂しさを紛らした。孤独から逃れようとグレ、覚醒剤を使い22歳で逮捕。再起を誓う。

 夫婦は22歳から8歳の双子まで4人の親でもある。「預かる子も自分の子も接し方は変わらない」のも工藤流。「良いことをしたら褒め、いけないことをすれば叱る」(優希さん)

 女子は主に優希さんが担当する。10代前半で男相手に稼いできた子は「なぜ体を売ったらいけないの」と聞く。「自分って生きちゃいけないんですよね」と沈む子も。性虐待や性非行、大半が男に利用された。「私はすごく大切に思う。出会えて良かったよ」。1、2時間話し込む。「女子1人の面倒をみるのは男子5人分の大変さがある。その子の“常識”を書き換えるのが本当に難しい」

 刑務所のように罰を与える場所―。そんな声を聞くたびに施設の役割を積極的に周知してこなかった国の姿勢を残念に思う。であれば、夫婦自ら発信する。以前は年間500人を超える視察を受け入れ、コロナ禍では大学のオンライン授業で特別講師を務めた。

 今月、一人の少女が巣立った。売春を経験して施設に薬物を持ち込んだ時期もあったが、泣き言を漏らしつつも自転車で昼の仕事に8カ月通った。「どうか行く先々で人に恵まれますように」と祈る夫婦。「いずれは地域に戻る。再び罪を犯さないために居場所と仕事、責任を持たせる必要性を理解してほしい」

 少年院を出た人の5年以内の再入院率(刑事施設を含む)は2割。我慢すること、想像力を持つことを伝え続けるが、限界もある。「保護観察の限られた時間では足りず、不安なまま見送ることもある」。良さんは打ち明けた。

 「怖い」。罪の内容を知れば懸念する人の気持ちも分かる。良さんでも「被害者を思うと、ぶちのめしたくなるときがある」。それでも荒れた当時の自分に手を差し伸べるように、見捨てることはできない。

 大人や社会にできることは。「子どもたちに向き合う自分たちのような支え手の背中を押してもらえると力強いです」

 くどう・りょう 1977年、福岡県田川市生まれ。2009年に更生保護施設「田川ふれ愛義塾」として国の認可を受け、16年から女子も預かる。著書に「逆転のボランティア ごみ拾いが暴走族を変えた!」(学研)。
 くどう・ゆうき 79年、同市生まれ。

(一瀬圭司)

=おわり

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