岸田流人事“恩返し”鮮明 安倍氏側近ずらり…早くも「傀儡」懸念

 自民党の岸田文雄総裁が進める党役員・閣僚人事は、総裁選で後押しを受けた主要派閥に要職を割り振る「恩返し」色が鮮明となった。中でも安倍晋三前首相に近い議員の登用が目立ち、自ら党改革を掲げた割に刷新感は乏しく、「傀儡(かいらい)」の懸念が強い。目玉人事である幹事長に内定した甘利明税制調査会長は「政治とカネ」の問題が付きまとい、党内からは迫る衆院選への不安も漏れる。

 新総裁就任翌日の30日午前11時。岸田氏は都内のホテルで真っ先に麻生太郎副総理兼財務相と面会した。

 その約3時間後だった。岸田氏が麻生派である甘利氏を党本部の総裁室に呼び込むと、幹事長内定の一報が永田町を駆け巡った。

 総裁選で岸田陣営の選対幹部を務め、岸田総裁誕生の立役者となった甘利氏は、党内の実力者である安倍、麻生両氏との連携の強さから「3A」と称される。

 政権運営の要となる幹事長に甘利氏を据える狙いについて、「安倍、麻生、岸田各氏のコーディネート役ができる」(麻生氏周辺)ことから、党内基盤の安定化を図る思惑がある。甘利氏を、これまで権勢を誇ってきた二階俊博幹事長の後釜とすることは、二階氏と対立する安倍、麻生両氏への「恩返し」を象徴するというわけだ。

 岸田氏が、自ら掲げた「老壮青のバランス」に目配りしているのは確かだ。主に重鎮クラスが起用されてきた党三役の総務会長に、衆院当選3回の福田達夫氏(細田派)を抜てき。旧竹下派の小渕優子元経済産業相を組織運動本部長に内定するなど、各派閥に配慮した「全方位外交」に腐心する。

 とはいえ、「また安倍、麻生の傀儡と言われかねない」(中堅議員)布陣なのも事実だ。細田派の松野博一元文部科学相を官房長官、総裁選で争った無派閥の高市早苗前総務相を政調会長とするなど安倍氏の側近で固め、さらには麻生氏を党副総裁に起用するなど、総裁選で強調してきた党改革への期待は早くもかすみがちだ。

 甘利氏の起用は、「政治とカネ」でつまずいた安倍政権の負の側面まで踏襲するとの印象を世間に与えかねない。

 甘利氏は経済再生担当相として環太平洋連携協定(TPP)交渉を取り仕切っていた2016年1月、口利きを依頼してきた建設会社から現金を受け取ったことの責任を取ってポストを退いた。だが疑惑についての十分な説明は果たされておらず、野党からの追及は必至だ。

 衆院選を控え、ご祝儀相場の支持率上昇を期待する党内に水を差しかねないと懸念する閣僚経験者は声を潜めた。「今回の甘利さんの起用は冒険だ」

 (前田倫之、大坪拓也)

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