入管に違憲判決 人権軽視の病根断ち切れ

 難民認定を棄却された外国人に裁判で救済を求める機会を与えないまま強制送還の手続きに走った入管の対応は憲法に違反する-。東京高裁が先週、スリランカ人男性2人が起こした国家賠償請求訴訟の判決でこう断じ、国に賠償を命じた。

 人権意識に乏しい入管行政の実態を直視し、違憲の審判を突き付けた意味は重い。国はかねて求められている抜本的な入管の改革に踏み出すべきだ。

 男性2人は在留期間を超えて日本に滞在し、帰国すると身に危険が及ぶとして難民認定を求めていた。国はこれを認めず、2人の異議申し立ても棄却し、2014年12月、他の不法残留者とともに2人をチャーター機で母国に送還した。

 ところが、2人が異議申し立ての棄却決定を入管で告知されたのは決定から1カ月余を経た送還前日だった。そのため弁護士とも連絡が取れず、裁判で争う提訴手続きは取れなかった。

 判決は、入管が早い段階から2人を含む集団送還を計画し、提訴を阻むため「意図的に告知を送還直前まで遅らせた」と認定した。その上で、こうした送還の手法は裁判を受ける権利や法による適正手続きを保障した憲法に反する、と結論付けた。

 また、不法就労目的で在留しようとした疑いがあっても「司法審査の機会が奪われることは許されない」と指摘し、請求を退けた一審判決を覆した。強制送還を巡り憲法判断にまで踏み込んだ判決は初めてという。

 こうした入管による「違憲行為」は常態化していた疑いが強い。上川陽子法相は今回の判決後の記者会見で、出入国在留管理庁が今年6月、送還手続きの運用見直しを通達していたことを明らかにした。国外退去の外国人には送還の時期を事前に告知し、難民認定を棄却された人の送還は棄却の告知から2カ月以上先に行うとの内容だ。

 本来なら、こうした措置は広く公表し、過去の状況を調査した上で誤りを率直に認める姿勢があってしかるべきだろう。

 入管組織の人権軽視といえる体質は今年3月に名古屋の入管施設で起きたスリランカ人女性の死亡事案でもあぶり出され、国際社会の批判を浴びている。先の通常国会では、難民認定の門戸を狭める政府の入管難民法改正案が国際水準から程遠いとして理解を得られず、事実上廃案に追い込まれた経緯もある。

 入管行政の病根は当局の裁量だけで手続きの可否が決まる閉鎖性にある。改革には、司法によるチェック機能を随所に組み込んで人権尊重の理念を具体化するといった制度全体の見直しが必要だ。そうでなければ信頼の回復はおぼつかない。

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