「聞く力」は自民党重鎮にではなく、被爆者の切実な声に

 「聞く力」といっても、どの意見に耳を傾けるかで大きく違ってくる。人の話を聞いてうまく取り入れる人。聞き過ぎて収拾が付かず流される人。第100代首相に就任した岸田文雄氏の組閣や自民党役員人事を見ていると、どうも後者ではないかとの懸念が拭えない。前途多難な印象だ。

 真っ先に取り組むべきは新型コロナウイルス対策だ。この1年半余、人々の生活が著しく制約される「非日常」の苦難が繰り返されてきた。この連鎖を一刻も早く断ち切り、改善することが最優先となる。

 その上で、岸田内閣は何を使命と見定め、力点を置いてかじを取っていくのか。憲政史上最長の7年8カ月も政権を担った安倍晋三元首相でさえ、これといったレガシー(政治的遺産)は思い当たらず、「一内閣一仕事」を見いだすのは容易ではない。

 「核廃絶に向けての思いは決してイデオロギーでも政治でもない。核のない世界を目指す思いというのは被爆地においては広く当たり前のことだ、とつらい被爆体験を語る人たちを見て改めて感じる」

 被爆地・広島を地盤とし、有権者の間に自然に被爆者がいる環境で政治家としてのキャリアを積んだ岸田氏は、先月の自民党総裁選直前、西日本新聞のインタビューにこのような胸の内を語っていた。ならば、進む道は自明ではないか。

 核兵器の開発や実験、保有、使用などを全面的に禁止する核兵器禁止条約。今年1月に発効したが、日本は批准していない。条約が国連で採択された2017年当時を含め、4年7カ月にわたり外相を務めた岸田氏なら、唯一の被爆国・日本に国際社会が望む役割をひしひしと感じてきたはずだ。

 来年開催予定の第1回締約国会議に日本もオブザーバー参加することを手始めに、核兵器全廃への一歩を具体的に踏み出すのはどうだろう。この国の「宰相」となった岸田氏の意志さえあれば、可能である。

 「聞く力」を発揮すべきなのは党重鎮に対してではなく、広島、長崎の被爆者の切実な声であり、非人道的な核廃絶を願う国内外の人々の声ではないか。

(東京支社報道部長 山口英宏)

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