「ブレークスルー感染」って…免疫突破型? コロナ禍であふれるカタカナ語

 「ブレークスルー感染って、日本語で何というんですか?」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に、素朴な疑問が寄せられた。新型コロナウイルスワクチンの接種が進む中、よく聞かれるようになったカタカナ用語だが、同じように思っている人も多いはず。どのような意味で、いつから使われているものなのか。

 まず行き当たったのが、厚生労働省のホームページだ。「新型コロナワクチンQ&A」に、長崎大の森内浩幸教授(小児科学)が8月27日付で「ブレークスルー感染」(Breakthrough infection)についてこう解説していた。

 「新型コロナワクチンの場合では2回目の接種を受けてから2週間くらいで十分な免疫の獲得が期待されますので、それ以降に感染した場合に『ブレークスルー感染』と呼んでいます」

 森内教授に問い合わせると「ずっと以前から『ワクチン接種したにもかかわらず起こってしまう感染』の意味で使われてきた医学用語です」とのこと。

 インターネットで論文を調べてみると、「打ち抜き感染」や「突破型感染」などと和訳した言葉が出てくる。現象を忠実に和訳すると、「免疫突破型感染」が丁寧だろうか。森内教授も同意見だ。

   ◆    ◆

 「ブレークスルー」という言葉、良い意味と受け止めている人が多いかもしれない。投手と打者の二刀流で大活躍する米大リーグエンゼルスの大谷翔平選手のように、それまで障壁となっていた事象を乗り越える際に使われてきたからだ。

 英語の辞書では、行き詰まった時の「突破口」「打開」とある。科学技術の分野なら「飛躍的進歩」「大発見」といった意味で使われている。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を開発し、ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授に関する記事でも使われた。

 クラスター、オーバーシュート、ロックダウン、ソーシャルディスタンス、バブル方式…。最近、コロナ禍に関連する用語としてカタカナがあふれている。

 取材班に寄せられた投稿の中には「最近変な外来語が増えて、分からない言葉ばかりになりました。分かりやすい言葉を新聞やテレビでは使ってください」という要望もあった。

 西洋の知識をより広く国民に普及させるため、福沢諭吉や西周ら明治時代の先人たちは外国語の翻訳に力を入れた。西洋の言語には日本になかった概念も多く、漢字に意味を加えたり、既存の語を組み合わせたりして新しい日本語を作り上げた。「自由」や「哲学」がそれだ。カタカナは和訳が難しい「エネルギー」など最小限にとどめた。

 その努力のおかげで、私たちは英語やドイツ語などが分からなくても、母国語で科学をはじめ多様な学問を学ぶことができる。

 カタカナが氾濫する現状を、福沢らはあの世からどんな思いで見ているだろうか。(田代芳樹、竹次稔)

 たしろ・よしき 大分県別府市出身 1984年入社。社会部、長崎総局、スポーツ編集、論説委員などを経て2018年4月からクロスメディア報道部。脳死移植などの医療問題や大学、気候問題を主に取材してきた。週末はジョギングとサイクリングの日課で減量に励む。

PR

開催中

第5回写遊会 写真展

  • 2021年10月15日(金) 〜 2021年10月29日(金)
  • まいなびギャラリー(北九州市立生涯学習総合センター1階)

緑のコンサート

  • 2021年10月30日(土)
  • 福岡市健康づくりサポートセンター あいれふホール

PR