1票は「マシ」より「推し」 コロナで政治が自分事になった若者

投じる ワカモノと衆院選①

 岸田新内閣が発足-。福岡県内で活動する劇団員のマサ(25)はスマートフォンの速報をチェックすると、約1カ月半ぶりに訪れた稽古場を眺めた。新型コロナウイルス緊急事態宣言下で、稽古は自粛していた。

 コロナ禍で生活は一変。昨年の公演は軒並み中止となり、収入は一気に不安定になった。昨夏前から食事を宅配する「ウーバーイーツ」のアルバイトを始め、自転車のペダルをこぐ。1人暮らしのアパートの家賃を払うと、残りが1万円を切る月もある。

 「政治」が自宅に届いたのは、演劇仲間が「就職する」と言い劇団を去った頃だった。郵便受けに「アベノマスク」が入っていた。それから、政治に対する気持ちは波のように揺れてきた。国からの10万円の給付金に喜び、文化事業への助成金は不交付となり落胆。東京五輪で感染者が増えて不安になり、ワクチン接種でほっとした。

 これまで選挙権があった衆院選1回、参院選2回は全て投票に行ったが、誰に入れたか、どの政党に入れたか、ほとんど覚えていない。「選挙ではいつも『マシ』な選択肢に票を投じてきた。せめてこの政党や政治家が『推し』と思えれば」。積極的な気持ちで選びたい。

     ‡

 「大人たちがいっぱい、すげえなぁ」。18歳で初めて投票所に足を運んだ4年前の衆院選。大分県のヒカル(22)は、雰囲気に圧倒された。親に言われて行っただけで、無理やり票を入れた。

 今は1人でハウス農家を営み、キュウリやトマト、ナスなどをレストランやホテルに届ける。コロナ禍で売り上げは激減。例年の6分の1に減る月もある。

 地域の農家は高齢者ばかり。アドバイスをくれることも多い。一緒の時間は楽しいが、数十年後の自分の生活を考えると不安になる。

 老後の資金は大丈夫? 年金はちゃんともらえる? 自分たちの将来にツケが回るのはごめんだ。「政治は若者に光を当てず、お年寄りが投票したくなるような感じにしていきよる」。自分たちの世代の投票率が低いのが原因では、と思うようになった。

 最近、意識してスマホでニュースを読む。こんなに政党があるのかと驚いた。友人たちはみんな文章を読むのが苦手だ。「政治や選挙のことを短い動画で伝えるとか、もっと若い人が政治に参加できるようにしてほしい」

 (文中と表、仮名)

 (川口安子、平山成美、豊福幸子)

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 コロナ禍で行われる衆院解散・総選挙。政治を「自分ごと」と感じるようになった若者たちを(1)新内閣発足直後(2)解散(3)選挙中(4)投開票-の4回の節目で定点観測する。

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