コロナと新政権 検証なき対策では危うい

 政権が代わっても新型コロナウイルス対策に待ったは許されない。冬場に向けて懸念される新たな感染の波をいかに抑え、かつての日常をどう取り戻していくのか。岸田文雄新政権の手腕が早速試されている。

 岸田首相は組閣に当たり、コロナ対策の主軸となる厚生労働相、経済再生担当相、ワクチン担当相の3人をそろって入れ替えた。首相就任後初の記者会見では、今後の取り組みの強化について新閣僚が連携して全体像をまとめ、国民に示すよう指示したことも明らかにした。

 その前提として、欠かせないことが二つある。一つは感染が過去最悪の規模に膨らみ、医療提供体制の逼迫(ひっぱく)が各地で生じた流行「第5波」の検証だ。

 新規感染者が一時期、1日に2万5千人を超えた主要因は従来より感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」のまん延とみられる。ところが9月中旬以降、その威力が衰え、全ての地域でほぼ同時に感染者が減少に転じた理由は判然としていない。

 政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長はこの点の解明が極めて重要と指摘する。感染者減少の理由としては国民の危機意識の高まり、繁華街の人出減少、ワクチン普及、高齢者施設での集団感染の減少、気候の影響などが考えられるものの、確かな結論には至っていないからだ。

 政府が進める対策の中で、何がどの程度効果を上げ、また何が不十分だったのか。この点の検証がおろそかなままでは、政府の「次への備え」は説得力を欠き、行動制限の緩和にも危うさがつきまとう。菅義偉前政権で目立った「専門知の軽視」からも脱却すべきだろう。

 もう一つは従来のコロナ対策全体の再点検である。政府は昨春、新型インフルエンザ等対策特別措置法の適用対象に急きょ新型コロナを組み込み、その後も国会での十分な議論もないまま特措法や感染症法、関連政令の改正などを重ねた。場当たり的な対応とも批判された。

 対策の柱である緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を巡っては全国知事会が見直しを求めている。発令の権限が国にあるため現場では機動的対応が取れず、適用の範囲や解除の基準にも疑義が生じているからだ。

 岸田首相はそうした声にも耳を傾け、感染状況が落ち着いた今こそ、医療提供体制の強化も含めて従来の対策を抜本的に立て直す議論を主導すべきだ。

 首相が新設を目指す「健康危機管理庁」も具体的な中身は曖昧だ。省庁の再編には官僚側の抵抗も予想される。そこを突破するためにも、新政権による対策の検証と国民各層を交えた幅広い視点の議論を求めたい。

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