「カズ兄ちゃん」慕っていたのに…同郷の2人に何が うきは保険金殺人

 「いつかは島に帰りたい」。そんな思いがかなうことはなかった。福岡県うきは市で4月、事故に見せかけて殺害された大分県日田市の会社員西村一敏さん=当時(64)=は大分県の離島、姫島(姫島村)の出身で、数年前に島を出たばかりだった。殺人容疑で逮捕されたおいの松成英一郎容疑者(54)からは「カズ兄ちゃん」と慕われていたという。2人に表立ったトラブルは確認されておらず、人口約1700人の島の人たちは悲しみに暮れている。

 親族によると、西村さんは中学を出てから父親や兄らと一緒に漁に出て、ミル貝やアワビ、サザエなどを捕っていた。二十歳を過ぎて島内の水産会社に就職し、約30年間勤めた。

 性格は温厚で酒好き。近くに住む70代男性は、下校中の小中学生に「おー、おかえり」と優しく声を掛ける姿を今でも覚えている。

 しかし、勤務していた水産会社が倒産住宅ローンの返済に窮し、数年前に島を出た後、2019年2月に松成容疑者が設立した日田市の運送会社に勤めるようになったという。西村さんは主に事務所で電話番をしており、「この仕事なら70歳くらいまでがんばれる」と、周囲に語っていたという。

 一方で、松成容疑者は高校進学で姫島を離れ、大分県内で保険会社などに勤務。02年に独立し、日田市で自動車保険などを取り扱う保険代理店を立ち上げた。学生時代は野球に打ち込み、日田市では社会人ソフトボールチームにも所属。「マツさん」と呼ばれて慕われていた。知人男性は「優しく、親分肌。人脈を広げるのが上手で顧客はどんどん増えていった」と振り返る。運送会社の他にも複数の会社を経営していたという。

 ただ事業が軌道に乗った頃から、頻繁に高級車を乗り換えたり、ボートレース(競艇)などのギャンブルに多額の金を投じたりする姿が見られ、周囲は心配していたという。

 2人の親族の男性は、2カ月に1回ほど西村さんと日田市で食事をしており、事件の3日前にも電話がかかってきた。ただ、その時は手が離せず、「また電話するわ」と言って切ってしまった。それが最後の会話になった。

 自宅の離れに西村さんの布団を用意して帰郷を待っていた男性は、声を振り絞るように語った。「一敏は、早く島に戻って釣りでもしたかったんやろう。何でこんなことになったのか。見当もつかない」

 (長田健吾)

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