生活費削り送金、弾圧恐れ両親転居…福岡からミャンマーへ覚悟の支援

 「国に帰れば私は殺されるかもしれない」。国軍による市民弾圧が続くミャンマーで民主派が立ち上げた「挙国一致政府(NUG)」を、命懸けで支援し続ける男性が福岡市にいる。飲食店を営むトン・アウン・チョさん(29)。母国の民主化を願って広く寄付金を募り、身を削って資金面でバックアップする。夢見るのは「古里が日本のような国になること」。帰国を諦めても、支援の決意は揺るがない。

 トンさんが来日したのは2018年4月。「人々がルールを守り、清潔な日本」は父の憧れで、日本で飲食店を開くという父の夢を背負って入国した。それから1度も帰国していない。

 ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」(AAPP)によると、今年2月の国軍のクーデター以降、弾圧による死者は8月時点で千人を超える。国民は外出が規制され、新型コロナの影響もあって失業者が増える一方で物価は上昇。経済は悪化しているという。

 トンさんは、これまでに自身の飲食店がある商店街などで募金活動を展開。福岡県内の寺院でマスクを20回以上販売し、その売り上げなどを現地へ送ってきた。当初は避難生活を送る知人に送り、4月にNUGが発足すると、送金の半分をNUG向けにした。生活費も切り詰め、送ったのは200万円以上。現在は民主派の九州のリーダー的な存在になっている。

 「NUGの幹部らは海外の人々とつながって勉強している。軍の弾圧があっても、著名な俳優が加わるなどNUGは拡大している」

 トンさんの活動は何者かによる通報で母国に伝わっており、トンさんは国軍側に狙われないよう両親に身を隠すことを勧めた。両親は「あなたは正しいことをしている。気にするな」と返したが、結局は折れて村を移ったという。「ミャンマーにはルールがない。夜道を歩いているときなど、何があるか分からない」

 トンさんが現地から収集した情報によると、国軍の発砲は現在も連日続いており、タイとの国境に近い都市などで民主派との衝突が散発的に起きている。NUGは海外からの寄金などで武器を調達。「現地では自分たちで爆弾を作ったり、タイなどから銃を密輸したりして、来るべき時に備えている」と明かす。

 国軍は銃で撃たれないよう、市民を駆り出して通りを歩かせ、その後ろでパトロールしているという。トンさんは「弱者いじめをする国軍の一部は腐敗している。今回ばかりは軍民政治が倒れると多くの国民が思っている」と強調する。

 トンさんは、混乱は2、3年続くとみている。「それが終わったとしても、私のことを嫌いな人がいるかもしれない。母国には帰れないと思う」。日本に住み続け、人々が幸せに暮らせる母国を見たいと思っている。 (稲田二郎)

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