「分配なくして成長なし」は立民?それとも自民?

 衆院は14日に解散され、事実上の選挙戦に突入する。今回の衆院選の焦点は新型コロナウイルス禍で深まった格差を是正する分配政策だ。「分配なくして成長なし」-。岸田文雄首相と野党第1党の立憲民主党の枝野幸男代表は、ともに似た言葉で分配重視の姿勢をアピールする。こうした理念を政策のど真ん中に据えてきた立民は、埋没を避けようと先鋭的な大規模減税などを掲げ、対立軸を示すことに腐心している。

 衆院解散を翌日に控えた13日の参院本会議。「成長の果実をしっかりと分配し、広く国民の所得を上げることで次の成長が実現する。成長と分配の好循環を目指す」。首相は、代表質問でそう力を込めた。

 首相は9月の自民党総裁選以来、分厚い中間層の再構築を目指す「新しい資本主義」を唱え、分配戦略に力点を置く。具体策は下請けいじめ対策の強化や賃上げした企業の税制支援、看護や保育、介護の現場で働く人の賃金アップだ。

 こうした政策やメッセージは立民と重なるものが少なくない。保育士らの賃上げは立民が2017年の結党から掲げる主要政策。

 首相が総裁選から繰り返す「分配なくして次の成長なし」との言葉も、枝野氏が遅くとも4年前から「分配なくして成長なし」というほぼ同じ表現を用いている。これは立民の衆院選公約の経済分野のキャッチフレーズも兼ねる。

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 与野党トップの理念が相似するのはなぜか-。安倍政権の経済政策アベノミクス」で進んだ円安、株高は一部の企業の内部留保や株式配当という形で富をもたらした。ただ、その恩恵が広く国民に行き渡らなかったとの指摘が付きまとう。

 首相自身、アベノミクスを評価しつつも、小泉改革以降の市場競争重視の新自由主義的な政策が「富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ」と格差の拡大を認める。

 これに長引くコロナ禍が追い打ちをかけた。企業の業績は業種間で「二極化」し、個人の格差も広がる。海外に目を向ければ、米国のバイデン政権は富裕層の増税や中間層の復活を訴え、格差是正に動く。分配に目配りする経済財政運営は世界の潮流になりつつある。

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 13日午後、都内のホテルであった立民の公約発表会見。枝野氏は「成長と分配の好循環は起きてこなかった。成長しない原因にしっかりと切り込み、適正な富の再分配を行うのが大きな違いだ」。首相との分配戦略の違いを問われ、声のトーンを上げた。

 この日、経済政策として新たに「1億総中流社会」の復活を掲げた。主な施策は、低所得者への年12万円の現金給付や時限的に行う年収1千万円程度を下回る人の所得税実質免除や消費税5%への引き下げだ。

 ただ、二つの減税策で年約18兆円の財源が消えるという。これとは別に示すコロナ緊急対策を含め、短期的に必要な財源は50兆円規模。全てを国の借金となる国債発行で賄う方針だ。中長期的には大企業や富裕層をターゲットに課税強化も示すが、どれだけの財源を確保できるかは説明していない。

 一方の首相も、年内策定を目指す数十兆円規模の経済対策は借金頼みだ。総裁選から分配戦略の柱とし、財源にもなる金融所得課税の強化は先送りを表明した。

 一橋大の佐藤主光教授(財政学)は「格差拡大は構造的な問題だ。景気対策のように短期で取り組むものじゃない。分配政策は持続性が問われ、恒常的な財源をどうするのかをしっかり議論すべきだ」と指摘する。

(一ノ宮史成)

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