タイ「開国」間近、観光関係者が本当に怖いのは… 隔離なし入国解禁へ

 【バンコク川合秀紀】タイ政府は11月から、新型コロナウイルスワクチンの接種完了を条件に外国人観光客の入国を隔離なしで認める。首都バンコクなど主要都市で米国や中国など感染リスクが低い国から解禁し、順次拡大。4月から禁止してきた店内飲酒やバーなど娯楽店営業も12月までに解禁する。

 タイの新規感染者は東南アジア最多の1万人前後。ワクチンの2回接種完了も国民の3割程度にとどまるが、基幹産業である観光関連分野の立て直しを優先する。

 隔離免除は7月にプーケット島で試行し、一定の効果が出たと判断。11月からの解禁対象は米中のほか英国、ドイツ、シンガポールが含まれる見通しで、日本政府も対象入りをタイ側に求めている。入国には接種証明書や出発前と入国時のPCR検査が必要となる。

新規感染者は東南アジア最多

 タイは世界的に人気が高い観光・娯楽都市。新型コロナウイルスの新規感染者が東南アジアで最多にもかかわらず、入国や営業制限の緩和に踏み切ることを当の観光関係者はどう受け止めているのか。バンコクを代表する二つの「名物ストリート」で聞いた。

 「バックパッカーの聖地」といわれるカオサン通り。約400メートルの通りに安宿や土産店、バーなど数百店が並び、コロナ禍以前は多くの外国人客でにぎわっていた。現在は大半が閉店し、閑散としている。

 土産物店を約50年営業してきたサーイさん(70)は、外国人客の受け入れを原則禁じた昨年4月から店を休業したまま。店先に出したいすに座り「こんなカオサンは初めて」。外国人客の隔離なし入国解禁への期待を尋ねると、「もう店を閉じようかどうか悩んでいる」と明かした。

 長く続けた店への愛着は深い。ただ、ワクチン接種済みが隔離なし入国の条件としても本当に感染リスクはないのか。「私は高齢でワクチンもまだ1回しか接種していない。外国人が多くやって来たら、やっぱり感染が怖い」。不安の方が強いようだった。

 路上で付け毛を編み込むサービスを15年続けるオートさん(30)は収入が激減し、コンビニのバイトを掛け持ち中。外国人客に戻ってきてほしいが、同時に「感染があまり減っていないタイを怖がって来ないんじゃないか」と懸念する。

 今月、半年ぶりに営業を再開したカフェ店主のヌムさん(36)は笑顔で「家賃を支払うためには感染が怖いと言っていられないからね」。通りには既に売りに出されたホテルやバーも相次いでおり「以前のカオサンに戻るのはまだ時間がかかるだろう」とも話した。

 モールやオフィスビルが集まる都心部アソーク地区にある「ソイ・カウボーイ」。タイ人女性目当ての派手なゴーゴーバーやパブ約30店が約100メートルの路地(ソイ)に密集し、日本人ら外国人客に知られる名所だったが、ここも今は大半が休業し、夜は怖くなるほどの暗闇に覆われている。

 12日夜、通りを歩くと営業中は2店だけ。どちらの店頭でも当局が禁じているのに「2階ならアルコールOK」とささやかれた。コーヒーカップに注ぐらしい。外国人客の入国と店内飲酒が解禁になる期待を尋ねようとすると、マスクなしのタイ人女性は「なるようになる」と酔った様子で答えた。

 通りの入り口近くでライブハウス「コーナー」を15年営むオーナーのチョムさん(68)は苦笑して「うちは他と違って女性はいない。音楽と酒を楽しむ場所だよ」。当局が店内飲酒を禁じた4月から休業中で、政府方針を受けて再開準備のために店に来ていた。

 航空会社のOBで、ライブハウスの経営は長年の夢だった。「入国する外国人客はワクチン接種を済ませているからリスクは低いはず。感染対策に気をつけながら何とか再開したい」と話す一方でこう漏らした。「怖いのは、タイ人だよ」

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