アベノミクス 論戦で9年間を総括せよ

 新型コロナウイルスの感染拡大でダメージを受けた人々の暮らしをどう支えるのか。日本経済を立て直し、成長軌道に戻す策は何か。今回の衆院選は経済政策も大きな争点となる。

 ところが各党の選挙公約を比べても違いが分かりにくい。コロナ禍で経営難に陥った事業者や生活困窮者への給付金など、似たような項目が並ぶ。地球温暖化対策の「グリーン」や「デジタル」をてこにした成長戦略も大同小異に映る。

 分配を重視する姿勢も与野党で重なる。岸田文雄首相の「分配なくして次の成長なし」という言い回しと、立憲民主党の公約にあるキャッチフレーズ「分配なくして成長なし」はほぼ同じだ。有権者が混乱しないか、心配にもなる。

 対立軸として明確なのは、2012年12月の第2次安倍晋三政権発足から続く経済政策アベノミクスの評価だ。これを続けるか否か。この選挙で問われる選択だ。それには、この約9年間の総括が欠かせない。

 アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」でデフレ脱却と富の拡大を目指した。

 日銀が大量の国債を買い入れる異次元の金融緩和で円安が進み、企業業績は回復した。カネ余りで株価も上昇した。景気拡大は71カ月と戦後最長に迫り、雇用環境も改善した。各種経済指標が好転したのは確かだ。

 一方で物価上昇率2%、名目国内総生産(GDP)600兆円といった政府と日銀の目標は達成できていない。九州をはじめ地方にも恩恵をもたらした訪日外国人客はコロナ禍で消えてしまい、多くの非正規労働者が仕事や収入を失っている。

 経済協力開発機構(OECD)によると、日本の平均賃金は伸び悩み、15年に抜かれた韓国との差は広がるばかりだ。国連の世界幸福度調査の結果も、日本の順位は下落傾向にある。

 この現実をどう見るか。野党は「お金持ちをさらに大金持ちにしただけ」「実質賃金が減り格差が拡大した」と批判し、立民は「1億総中流社会」の復活を掲げる。ならば、アベノミクスに代わる包括的な経済政策を有権者に示す必要がある。

 岸田首相は「わが国経済の成長、体質強化に大きな役割を果たした」と評価し、所信表明演説でも三本の矢の継続を表明した。首相が掲げる「新しい資本主義」もアベノミクスの延長上にあろう。修正するなら、どこを改めるか明確にすべきだ。

 有権者にその「違い」を示す論戦を与野党に望みたい。

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