秋の定番曲に感じた幼子たちの異変 「失われたもの」を補うすべは

 <秋の夕日に 照る山(やま)紅葉(もみじ)…>

 福岡市の保育所に子どもたちの歌声が響く。この時季の定番曲だが、園長は例年との違いを感じている。出だしの「あ」が「え」に近い発音に聞こえるのだ。おしゃべりが上手になる時期に、口の開け方のお手本となる保育士はずっとマスク姿。「発音のこつを習得できていないのかも」と心配する。

 0~2歳児の約10人が通う福岡市の保育園「キッズくれよん」の野見山信代さんは、子どもたちに人気の劇を披露しても、以前より笑顔が少なくなったことに気付いた。目元だけしか見えないことで感情が伝わりにくく、今は楽しい時間なのか、注意されている時間なのか、「子どもたちが戸惑っていたようだ」と話す。そこで、身ぶり手ぶりを大きくし、言葉にも大げさなぐらい抑揚をつけるようにした。

 家の外では誰もがマスクを着けている光景が、子どもたちに与える影響は大きい。昨年5~6月に全国認定こども園協会が保護者6108人に実施した調査では、6割が緊急事態宣言によって子どもに気になる変化があったと回答。具体的には「離れたがらない」「突然泣き始める」など不安定さをうかがわせる内容もあった。野見山さんは子どもたちのイライラを察知したら、公園で体を動かす機会を増やすようにしている。

 乳幼児期は「種から芽が出る」といわれるほど人間の成長にとって大切な時。その間をコロナ禍で過ごすことによる将来的な影響を懸念する声もある。長崎大の森内浩幸教授(小児科)によると、発達過程にある子どもの歳月は、感染が落ち着いてから取り戻せるものではないという。マスク越しの会話、さまざまな体験をする機会が失われることが「人の気持ちを読み取る力や実技をこなす力、コミュニケーション能力の低下につながるのではないか」と危ぶむ。

 政府はこども庁の創設を念頭に置く。その姿はまだ見えないが、福岡市南区の母親(42)は「子どもの声、親の思いを吸い上げる機関になってほしい」と話す。コロナによる成長への影響についての調査や分析を期待する。小学5年と2年、年中の3人の子どもたちは、もう2年も大好きなキャンプに行っていない。命を守るためだったとはいえ、「政府の要請」による休校措置で友達と遊ぶ機会は減り、登校を嫌がるようになった時期もあった。

 子どもには適切な教育を受けさせなければならない。その義務教育の大きな責任を担う政府の判断によって、得られなかったものがあまりに大きいと考える母親は、なんとか補うすべを示してほしい、と心から願う。

 (斉藤幸奈)

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