博多人情で助け、助けられ

コメディアンの小松政夫さんは、中学1年の時に父親を亡くした。定時制高校に通いながら働いたのは福岡市内の和菓子店。けなげな少年を店のおかみ、地元で言う「ごりょんさん」は特にかわいがった▼俳優を夢見て上京する折に。「借金さしてください」と申し込むと、「何言いよっとね!」と叱られた。そして借金ではなく餞別(せんべつ)に、思いがけないほどのお金を渡される。小松さんは生涯、恩を感じていたという▼人気商品のマシュマロは明治の代に、森永太一郎から製法を教わった。森永製菓創業者である。後に、バレンタインお返しの定番へ。この店から昭和の文化が生まれた▼そんなふうに石村萬盛堂は博多の町で歴史とドラマを紡いできた。「皆さんが心一つになるような商品を心掛けてきました」。長く経営に携わる石村一枝さんは言う▼けれど、老舗の看板で売れるほど時代は甘くない。加えて新型コロナ禍。土産や慶弔用の動きも鈍い。今月、「事業譲渡」の報が流れると「廃業か」との声が相次いだそうだ。いえいえ、ご安心。経営の主体は変わるが、ブランド名もそのままに営業は続ける▼本店は博多祇園山笠「追い山」終点の「廻(まわ)り止め」にある。「ここに萬盛堂がなかったら困る」。うれしい声援も届いた。新事業の助け舟を出したのは、この町ゆかりの経営者たち。明るい未来だけではないだろうけど、一条、博多人情の光が差した。

PR

開催中

初めての俳句教室

  • 10月7日(木)、11月4日(木)、12月2日(木)
  • 耳納市民センター多目的棟

PR