「連合」新会長 労働運動の裾野を広げよ

 国内の労働組合を束ねる中央組織「連合」の新会長に芳野友子氏が就任した。1989年の連合発足から8代目の会長で、女性は初めてである。

 働く女性の代表として連合では副会長を務めてきた。働き方や就労の価値観が多様化する中で、労働条件の改善や労働者の生活向上、よりよい社会づくりの先頭に立ってほしい。

 これまで連合の会長は鉄鋼や電力、電機などの大企業労組の出身者が務めてきた。前会長を6年間務めた神津里季生氏の後任選びの調整は難航し、通例では8月ごろの内定が今回は1カ月近くずれ込んだ。

 旧民主党の流れをくむ民進党の分裂で、連合を構成する産業別労組(産別)は支持政党が立憲民主党と国民民主党に分かれている。この路線対立が後任人事にも影響したようだ。

 10月の定期大会が迫る中、白羽の矢が立った芳野氏は中小の製造業が中心の産別「JAM」の出身だ。傘下に39万人と連合で5番目の勢力を抱えるとはいえ、加盟単組の6割が100人以下という組織である。

 芳野氏も就任は「想定外だった」という。女性であることに加え異色な経歴とも言えるだけに、構成員約700万人の巨大組織のかじ取りが注目される。

 まず取り組むべきは、労組の存在意義を広く社会に再認識させることだろう。第2次安倍晋三政権以降、政府が経済界に賃上げを要請する「官製春闘」が定着し、かつての主役だった連合の影は薄くなった。

 新型コロナ禍であっても好業績の企業は少なくない。賃上げを実現して実質賃金の低下を食い止め、最低賃金の底上げや時給で200円を超す地域間格差の是正に取り組み、全国一律の最低賃金制度への道筋をリードしてほしい。

 芳野氏は、岸田文雄首相が成長と分配の好循環づくりを目指し設けた「新しい資本主義実現会議」の有識者メンバーに選ばれた。早速、働く側の視点からのチェック能力が問われる。

 労働運動の裾野も広げたい。昨年の雇用者数に占める労組加入者数の比率は17・1%で、前年比0・4ポイント増とわずかながら11年ぶりに上昇した。従業員千人以上の大企業は労組加入率が4割を超えたが、99人以下の中小零細企業は1%に満たない。多様な仲間を増やし、大企業の正社員クラブとやゆされた連合を脱皮させる必要がある。

 女性の加入率は平均を下回る12・8%で、パート労働者は8・7%にとどまる。男女共同参画社会の推進など全ての人に関わる問題に取り組むことが、中小零細企業や非正規で働く人々を呼び込む近道となるはずだ。

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