仮放免急増…実は感染対策 変わらぬ「場当たり的」入管行政

 たばこを深く吸い込み、缶コーヒーをゆっくり口に含んだ。4年10カ月ぶりの「外」。「本当に夢のようだ」。晴れやかな表情で青空を見上げた。

 今月4日、長崎県大村市の大村入国管理センターから仮放免された中東出身の50代男性。出迎えた大村市在住の支援者、川田邦弘さん(69)の車の中で、「二度と過ちは犯さない」と誓った。

 違法薬物関連の事件で実刑判決を受け、2010年から6年間服役した。出所後の16年末、在留資格がないとして大阪出入国在留管理局の施設に収容され、18年に大村に移送。一時的に収容が解かれる仮放免が、17回目の申請でようやく認められた。母国に戻れば宗教上の理由で迫害される恐れがあり、仲間や支援者がいる中部地方で過ごすつもりだ。難民申請などを支援する松井仁弁護士(福岡県弁護士会)は仮放免制度の改善で就労が可能になれば、自立した生活もできるようになる、と言う。

 入管行政に向けられる視線は厳しい。今年3月、名古屋入管の施設に収容中のスリランカ人女性が死亡。飲み物をうまく摂取できず鼻から出した際に「鼻から牛乳や」と職員が冷やかしたことなどについて、出入国在留管理庁は調査報告書で「人権意識に欠ける不適切な発言」と指摘。大村では2年前、長期収容にハンガーストライキで抗議したナイジェリア人男性が餓死している。収容期間が9年以上の外国人がいる現状に、国内外から「人権蹂躙(じゅうりん)」との批判が上がる。

 中東出身の男性も大村での収容を「苦しい時間だった」と振り返る。ささいなことで係官から声を荒らげられ、嫌がらせを受けたという。収容中に痛めた足は治っていない。「人間として扱ってほしかった」

 こうした行政の「闇」は新型コロナウイルスの出現によって、図らずも「改善」された面もある。センターによると、施設内での感染拡大防止のため、昨春ごろから仮放免を認めるケースが急増。19年夏に約130人だった収容者数は、10分の1以下の10人(今月15日現在)にとどまる。ただそれは、一時的な解消にすぎず、解決ではない。政治の積極的な関与も見えてこない。

 収容者を長年支援する川田さんはもっと恐ろしい「闇」を指摘する。

 「全てを知っているわけではない」と断った上で、続けた。「心を病んでいるのは収容者だけじゃない。若手係官は収容者への嫌がらせを先輩から指示され、自責の念にさいなまれ苦しんでいる人もいる」

 記者が大村のセンター総務課に確認すると、こう応じた。「(嫌がらせを)具体的には把握していないが、収容者が(係官の対応に)納得しないということは無きにしもあらずだ」

 母国に居場所がなく、日本での滞在を求める外国人を長期収容するシステムは、感染が落ち着けば-。「コロナ前」に戻ってはならないものの一つが、ここにある。 (河野潤一郎)

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