公示日朝にミサイル…与党、実戦力試された危機管理

 「成長と分配の好循環の実現で、新しい日本の未来を切り開いていく」―。19日公示された衆院選で、岸田文雄首相(自民党総裁)は東日本大震災の被災地・福島で第一声を上げ、復興を誓い新型コロナウイルス対応、経済対策を前面に押し出した。連立を組む与党・公明党も政策実現力をアピール。ただ、北朝鮮による弾道ミサイル発射後、首相は地方遊説をキャンセルし、官邸に戻り危機管理に当たる慌ただしい初日となった。

 「東日本の復興なくして、日本の再生なし。この言葉を心に刻んで頑張りたい」。19日午前10時20分すぎ、首相は福島市の山あいにある温泉街「土湯温泉」でマイクを握った。2012年衆院選以降、自民党総裁は福島の地から国政選挙演説の火ぶたを切っている。この日も、首相は「原発の廃炉、処理水、心のケアの問題、まだやらなければいけないことがたくさんある」と語り、被災地に寄り添う姿勢を鮮明にした。

 約20分間の第一声。復興の次に時間を割いたのが、新型コロナだった。今冬の「第6波」を見据えた病床確保、経口治療薬の早期開発、検査拡充と取り組みを列挙するとともに「暮らしを支える経済対策をしっかり用意しなければならない」。雇用調整助成金の延長などを示し、自身の持論である「新しい資本主義」の説明にも力を入れた。

 「これは自公政権にしかできない」と訴えた外交・安全保障では早速、北朝鮮のミサイルの試練に見舞われ、危機管理能力を試された。

 発射時は、福島の演説を始める直前ごろとみられ、松野博一官房長官も自身の選挙運動で地元の千葉県に帰っていたタイミング。首相はその後、仙台市に移動して街頭演説した。3カ所目に秋田県内で予定していた集会や演説会は取りやめて帰京し、午後4時すぎから官邸で国家安全保障会議を招集した。

 記者団の取材に対しては「危機管理で十分な態勢を取っていた」。対応に抜かりはなかったと主張し、ミサイルを相手領域内で阻止する敵基地攻撃能力の保有に改めて言及、強い指導者像を演出してみせた。

 公明の山口那津男代表は神奈川県のJR川崎駅前で第一声に臨んだ。

 「国民の声を聴き、謙虚な姿勢で真摯(しんし)な政権運営に努める」。こう自民との連立政権合意書の一節を唱え、目玉公約である高校3年までの一律10万円相当の給付を巡り、首相が「(考えが)重なる部分がある」と話していることを紹介。実現への手応えを漂わせた。

 一方で山口氏は、立憲民主党が政権を取った場合に共産党が限定的に閣外協力するとしている「野党共闘」に対し、「政策の目標も不明確で連立の姿が見えない。不安定な選択肢として野党に政権を委ねるわけにはいかない」と痛烈な批判を加えた。

 与党の両トップがこの日の第一声で、「政治とカネ」問題や「選択的夫婦別姓」に言及する場面はなかった。

 (井崎圭、大坪拓也)

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