記事への扉を開いてもらえるように 写真デザイン部・茅島陽子

 「新聞社で何やってるの?」と聞かれたら「新聞の、記事でも写真でもない部分を作っている」と答えてきた。グラフィックといって、代表的なのは地図、グラフ、イラストや、連載コーナー名のカット、そんな部分を幅広く担っている。取材結果に寄り添うことが優先で私たち自身が表に出ることはあまりないけれど、記事に奥行きと彩りを添える大切な仕事だ。

 今年から展開している本紙のニュースサイト「西日本新聞me」では、紙面から厳選した連載やコーナーを「特集」に取り上げ、タイトル画像を付けている。企画を端的に表現するメインの一枚を、デザインの世界ではキービジュアルと呼ぶ。新聞紙面とは違い、見てもらえる時間は、おそらくほんの数秒。その数秒で何を訴えるのか、細かな調整や選択を重ねながら一枚一枚を組み上げる。

 8月、福岡市・天神の複合商業施設「イムズ」が閉館した。デザインの最先端を駆け抜け、多くの人に愛されたビルだった。「閉館」と聞けば、当初は重ねた年月や歴史を思い、追憶を誘うような落ち着いたイメージを考えたが、実際の原稿はそればかりではなかった。関連企画のキービジュアルは「こんな明るい閉館記事が他にあっただろうか」と思うくらい前向きで鮮やかな印象に。惜別の哀愁よりも、閉館してなお輝く魂や、読者の共感を大切にしたいという思いにフォーカスした結果だった。

 写真の使用が難しい場合は、チームメンバーの創造力が頼り。例えば「性を考える」は、個性や多様性を尊重しよう、旧来の型にとらわれずに考えよう-というのが企画の趣旨。しかしタイトル画像は「固定」しなければならないという“矛盾”まで考え抜き、記事の精神を一枚にどう落とし込むか、関係者一同悩みながら作成した。

 ウェブやアプリのキービジュアルは記事につながる扉のようなもの。取材記者の思いや、記者に託してくれた人たちの思いが伝わるように、そして少しでも多くの読者が「扉」を開いてくれるように、デザインに心を尽くしている。

 かやしま・ようこ 福岡市出身、2001年入社。写真デザイン部デザイングループでグラフィックを担当。連載記事に添えるイラストなども手掛ける。42歳。

 15~21日は新聞週間。今、伝えるべきことは何か。紙面で、インターネットで、どう発信していくか。悩みながら、走りながら地域に、社会に向き合う記者たちが思いをつづります。

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