“不適格”でも決めた譲渡 「猫も人も大切にしたい」保護団体の挑戦

 マーキングは猫が縄張りを示すための行動だ。少量のおしっこを壁などに引っかける。転居や新しい猫が増えるなど環境が変わるとよく見られる。多頭飼育ならなおさらだ。

 「福岡ねこともの会」の城恭子代表理事(53)=福岡県大野城市=の自宅マンションには現在、27匹の猫が暮らす。壁はマーキングを防ぐペットシートが張り巡らされ、ピンクと白で統一された家具も全て透明の撥水(はっすい)シートがかぶせてある。

 会が目指すのは殺処分ゼロ。事故や虐待などに遭った猫を引き取り譲渡先を探す。その間、会員が自宅で預かる。多くは野良猫だ。

 希望者の誰でも譲渡するわけではない。年齢や家族構成、アレルギーの有無から家屋の間取りや環境、以前飼ったペットの死因まで、面談や訪問で確認する。保証人も必要だ。全ては「猫が幸せに暮らすため」。

 ハードルが高ければ越えられる者は少ない。コロナ禍で譲渡会も中止が続き、昨年度の譲渡数は27匹。前年度から67匹も減った。その分、猫は会員宅に滞留する。現在、会員が預かる猫は計50~60匹。10年以上の付き合いの猫もいる。

 城さん宅の猫用トイレは13カ所。掃除に1日2時間、30リットルの猫砂を消費する。「会員宅はいつもパンク寸前。でも妥協はできない」

「飼い主」断られ続けた事情

 玄関のチャイムを鳴らした途端、犬の大合唱が始まった。ドアを開けると、異臭が鼻を突く。福岡市西区の一軒家。女性は小学生の息子と犬4匹、ハムスター1匹、インコ4羽、そして猫2匹と暮らす。

 2年前までは認知症の母と3人だった。いつも母と息子の怒号が飛び交った。発達障害の息子は何かに集中すると周りが見えなくなる。その態度に腹を立てた母が手を出し、息子がやり返す。母は自分の感情を制御できず、息子は祖母が怒る理由を理解できない。「このままではどちらかがけがをする」。自身も適応障害の診断を受けた。

 ようやく母を施設に預けることができた。念願のペットをお店で買った。小さなチワワ。かわいかった。もう1匹、もう1匹…。

 今度は猫がほしい。地域情報サイトで「飼い主募集」に片っ端から応募した。だが話はなかなかまとまらない。手を差し伸べたのが保護猫団体「おちゃねこ八女」(同県八女市)だ。今年3月、姉妹猫のちーずとぷりんを女性に預けた。

絶えぬ騒動、家族ごと見守る

 「あなたに何かあった時、この子たちをどうするおつもりですか」。最初、女性と面談したおちゃねこ八女の池田淳子代表(45)は厳しく問い詰めた。あまりのけんまくに女性は半分泣きながら、なぜこんなに責められるのかと不満だった。

 普通なら女性は「譲渡不適格」。だが池田さんはあえて譲渡を決めた。おちゃねこが断っても、彼女はどこからか猫をもらうか、拾ってくるだろう。放っておけば、その猫はどうなるか。「うちが譲渡して、猫も彼女も見守った方が良い」

 無料通信アプリLINE(ライン)で女性と会員数人のグループを作った。定期的に連絡して近況を把握し、相談も受ける。

 騒動は絶えない。7月、女性は体調を崩して1週間入院した。動物は交際中の男性が預かったが、女性はラインで知らせず、その間、ぷりんが一時脱走した。

 それでも少しずつ関係性はできている。池田さんたちは交際相手の男性とも話し合い、11匹の後見人になってもらうことになった。

 おちゃねこは他にも数組、家族ごと猫を見守っている。「猫も人も地域も大切にしたい」。挑戦は続く。

 (竹添そら)

 =次回は29日掲載

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