「分配」の財源 赤字国債頼みは無責任だ

 今回の衆院選は「成長と分配」がキーワードの一つである。与野党が新型コロナ禍対策や格差是正を掲げ、分配の充実、強化を競っているが、その財源については曖昧な説明が目立つ。

 財源の手当てを棚上げにしたままでは、その政策を実現できるか疑問が生じる。財源を正面から論じないのは国政政党として無責任である。負担についても逃げずに論じてほしい。

 コロナ禍を乗り切るために当面は赤字国債に頼らざるを得ない。傷んだ経済を支えるのが優先だ。こうした主張に理解できる部分はある。その場合も、将来、赤字国債の穴を埋める財源の検討が欠かせないはずだ。

 コロナ禍以前から先進国で最悪だった日本の財政赤字はさらに悪化した。補正予算を3度組んだ2020年度は新規国債発行額が初めて100兆円を超えた。21年度予算も歳入の4割強を国債で賄う計画だが、借金頼みは無限には続けられない。

 にもかかわらず、選挙戦では気前のいい言葉が飛び交う。自民党の岸田文雄首相は「数十兆円規模の経済対策を最優先でお届けする」と強調した。連立を組む公明党は「未来応援給付」として18歳までの子ども1人当たり一律10万円相当を給付し、マイナンバーカード所有者に3万円相当を配るという。

 野党も負けてはいない。立憲民主党は年収1千万円程度までの所得税の時限的な実質免除や低所得者への12万円給付を訴える。共産党や日本維新の会、国民民主党なども現金給付を公約に盛り込んだ。野党各党は消費税の減税や廃止も唱える。

 ところが、これらの政策実現に見合う財源が与野党の公約に見当たらない。野党は大企業優遇税制の是正、所得税や金融所得課税の強化、無駄の排除などを掲げるが、とても足りない。共通するのは借金頼みだ。

 財政規律を軽んじる風潮が強まっている。そう懸念せざるを得ない。東日本大震災の後、被災地の復興対策とともに財源が議論され、増税などで復興財源が確保されたのとは対照的だ。

 コロナ禍対策で昨年、全国民への一律10万円給付が実現したことで、財政の節度がないがしろにされてはいないか。国の借金が増え続け限度を超えれば、信用を損ない、金利の急上昇があり得る。急激なインフレを招き、平穏な暮らしが脅かされる恐れもある。そんな政治に、この国の将来は託せない。

 月刊誌への寄稿で与野党の政策論争を「ばらまき合戦」と批判した財務省の矢野康治事務次官の危機意識を、政党も有権者も無視はできない。

関連記事

PR

PR