【私の視点】「みんな」実は一部?ネット世論、実態とずれ

【東京大大学院教授・鳥海不二夫さん】

 ツイッターでは最近、共通のハッシュタグ(検索目印)を付け、政治を批判したり賛同したりする投稿が拡散している。膨大なツイートのデータを計算社会科学の観点から分析する中で、今のネット世論をどう見ているか。

 「ネット世論と言っても、実際には世論と言えないと思います。少数派の意見でも、ネット上では多数派に見える現象が起き得るからです。日本は世界でも、ツイッターで積極的に政治の話をする人が少ない方です。積極的に発信しているアカウントは多くても100万程度ではないでしょうか。だとすると人口の1%にも満たず、しかも平均的な意見の100万人というわけではなく、とがった意見の人たちと言えます」

 「こうした人たちがネット上で声を上げて発信し、その賛否が8対2に見えたとしても、それは1%未満の人たちの中での8対2にすぎません。残り99%の人たちの意見について、何かを言えるわけではない。『そういう意見がある』とは言えても、いわゆる世論と同じである保証はないのです。ネットでは一見大きな声でも実は少数派が言っていることがあるのを意識した方がいいです」

 9月の自民党総裁選に立候補した高市早苗政調会長がネットで支持を集めた。どう分析しているか。

 「ネット世論では高市さんが圧倒的に支持を集めていても、党員投票は河野太郎さんが1位で、最終的には岸田文雄さんが首相になりました。ネットで見える声は大きかったが、実態は違った。ネット上で声を上げて応援する人は可視化されても、声を上げない人は見えないからです。声を上げて支持する人と、実際の支持者の数は異なります。衆院選でも、この点には気をつけないといけません」

 ネットの空間では同じような意見が「エコー(反響)」して戻ってくることで、特定の信念が増幅される現象の「エコーチェンバー」が起きる。ツイッターアカウントが、どの程度この現象の影響を受けているのかを可視化するアプリを、9月に公開した。

 「仲間内で議論していると、それ以外の意見は見えなくなりがちになる。自分が見ているツイッター上の『みんな』が言っていたとしても、実は一部の人が言っているだけかもしれない。アプリを通して、自分が見ているのは必ずしも世間一般の意見ではなさそうだと分かることには、一定の意味があると考えました」

 「ツイッターはほとんどの人が趣味で使い、誰をフォローするのかを決めています。一方、世の中のあらゆるコミュニティーを同じようにフォローするのは人間の能力では不可能です。自分の知らない世界は見えないため、偏った世界観で見ていることになります」

 私たちが意識すべきことは。

 「私たちが普段見ている情報は社会に存在する情報のごく一部だけで、他の物の見方もあると考えることが重要です。特に選挙の時期などは意図的にネット世論をつくろうとする人もいます。もし自分の考えと合致するような情報ばかり流れてきているのであれば、情報環境を見直した方がよいかもしれません。さらに、メディアもネット上の情報を過剰に評価することがあるため、注意が必要です」

 (聞き手・金沢皓介)

 とりうみ・ふじお 1976年生まれ。専門は計算社会科学で、今年4月から現職。ツイッターなど会員制交流サイト(SNS)のビッグデータから、トレンドや炎上の事例などを研究する。

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