「このあたりかな」比例代表、身内同士の選挙戦も静かにヒートアップ

東京ウオッチ】秘書ひしょ話(5)

 31日投開票の衆院選は、中盤戦。立憲民主党などの野党は今回、289小選挙区のうち、213選挙区で候補者を一本化し、野党系無所属候補を含めると、217選挙区で対与党の共闘態勢が整ったことになる。比例代表と合わせた全465議席の陣取り合戦は最後、どのような絵巻を描き出すのか。さて、今回の「秘書ひしょ話」が光を当てるのは、こうした熾烈(しれつ)な“本戦”の裏側。与野党ともに、身内同士による争いも静かにヒートアップしているのです。

 報道各社が選挙戦序盤の情勢調査をさみだれに報じた今週。

 自民党の古参秘書が、食い入るように紙面を凝視していた。視線の先には、与野党の候補がしのぎを削る小選挙区の動向…ではなく、全国11の比例代表ブロックで自民党がそれぞれ何議席を確保できるかの予測記事。例えば、定数20の九州ブロックでは、自民の獲得議席予測は、前回2017年並みの7議席程度となっている。

 「このあたりが当落線上だろうな-」

 情勢調査に関する各紙の書きぶりや、その候補の前回選挙時の「惜敗率」(小選挙区当選者、つまり自分が敗れた相手に対する自分の得票比率)などを交互に見比べながら、秘書は誰にいうともなしにつぶやいた。リストの紙に赤ペンできゅっきゅっと丁寧に印を入れながら、興趣深げに独自の分析を進めていく。

 比例代表で当落の鍵を握るのは、その候補が所属政党の比例名簿に何位で登載されているかだ。もちろん、上位であればあるほど勝利の確率は高まる。

 自民は今回、九州ブロックで、かつて県内の小選挙区定数削減を受けて小選挙区を譲った比例前職を単独1位として優遇し、単独2位には小選挙区の公認調整から漏れた新人を掲載した。このほか、党の内規に沿って73歳未満を対象に、小選挙区と比例の重複立候補者25人を同列の3位として載せ、28~30位には元職や新人を充てた。

「厳しい人がいっぱいいる」    

 仮に、の話である。

 自民が比例九州で7議席を獲得すれば、単独1、2位の2人は当選。残り5議席を巡る党内の争いとなる。無論、小選挙区で当選すれば比例枠を争うレースからは自動的に勝ち抜け。問題は、小選挙区で敗れた候補が、前掲の惜敗率で残り5枠に滑り込めるかどうか。同列3位の25人中、惜敗率の高い人から順に5人が復活するという意味を持つ。

 「安倍晋三元首相の下で戦った過去3回ほど、自民に風は吹いていない。今回は、小選挙区では厳しい人がいっぱいいるぞ」

 くだんの秘書は、九州に限らず大方のブロックの比例代表枠は、小選挙区の敗者復活組で埋まることになると結果を見通す。与野党の攻防は日を追うごとに激しさを増しており、「比例(復活)当選の報に接するのは未明になる」。

 過去には福島県を地盤とする自民候補が、小選挙区の公認調整がもつれた末に、比較的当選が堅いとみられた中国ブロックの比例名簿に落下傘として回されたこともある。今回も、激しい公認争いの結果、参院からくら替えした閣僚経験者に小選挙区候補の椅子を奪われ、政界を引退する形になった前職にまつわり、その長男を、無縁の北関東ブロックで名簿登載する事態が起きている。

 「党執行部はわずかな比例枠を巡って、やりくりしないといけない。選挙区で厳しい戦いを強いられる候補者にとっては、まさに死活問題。選挙後にしこりとなるケースも少なくなく、知恵と胆力がいるぞ」

 赤ペンを持ち直し、新聞のページとリストを見比べ、めくり始めた秘書。「さてさて、あっちの派閥の連中はどうなるかね」。比例復活の行方次第では、党内派閥の勢力図もがらっと塗り替わりかねない。開票終了後の皮算用にも余念がないようだ。

「仲間を追い落とした」という引け目      

 片や野党にとっても、比例代表での暗闘は、無縁とは言えない。

 比例復活を経験したことのある立民議員のベテラン秘書は「比例当選の任期中は党内で肩身が狭かった」。同じ衆院議員のバッジを着けているとはいえ、永田町では小選挙区で勝ってこそ一人前とみなされる。「復活組には、『仲間を追い落とした』という引け目が付いて回る」。逆に、接戦であっても小選挙区で勝ち上がれば、仲間を救った「功労者」として人事面などで優遇されやすいというわけだ。

 今回、立民は九州ブロックに、小選挙区との重複立候補者22人全員を、同列1位で掲載した。序盤の情勢調査の獲得予測議席は5議席程度。こちらも息を詰めるしのぎ合いの様相である。

 いまだ投票先を決めていない有権者も一定の割合を占める。終盤から31日の投開票へ向け、情勢は変わる可能性があります。

(河合仁志)

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