【激戦区ルポ】争点は「安倍政治」 元秘書と「西岡党」激突、長崎1区

 22日夕、長崎市の繁華街。元首相安倍晋三が車の上でマイクを握った。自身の秘書を17年間務めた自民党新人、初村滝一郎の応援に駆け付けたのだ。

 「誰よりも生まれ故郷、長崎を愛する男。私の右腕です」。初村をたたえ、千人以上の聴衆に支持を呼び掛ける。その後、初村と力強くグータッチ。2人並んで3度拳を突き上げた。

 父は中選挙区時代の長崎1区の衆院議員、祖父は元労相の政治家一家で育った初村。だが、出身は選挙区外の長崎県諫早市だ。出馬が決まった背景には、安倍の働き掛けが影響した。

 前回衆院選で比例復活した前職が6月、不出馬を突然表明し、党県連は候補を公募。当初は女性県議が有力視されたが、初村が応募を決意すると、安倍は県連関係者に直接電話を入れた。「しっかりと公正に選んでください」-。「(安倍の顔をつぶすと)先々やっかいだ」(県連幹部)。そんな空気が急速に広がり、選考はスピード決着した。

 初村がアピールするのは安倍の秘書時代に培った官邸や省庁とのパイプだ。「永田町、霞が関、官邸。政治のど真ん中で経験を育めた」。この日の演説では国政中枢との近さを強調。今後の選挙戦でも、前首相の菅義偉や経済産業相の萩生田光一が来援する。官邸主導の「1強政権」を7年8か月も維持した安倍の下で、手足となって働いた初村。「官邸や霞が関を知り尽くし、どんな事業をするにも国の支援が欠かせない長崎にとってこれ以上の人材はいない」。県連関係者は期待を寄せる。

 ただ、安倍を巡っては「森友、加計(かけ)学園」や「桜を見る会」などの問題が今もくすぶり、「安倍との近さ」を打ち出し過ぎれば「反安倍」の有権者の票が逃げる危険をはらむ。長崎1区がある被爆地・長崎市はリベラルな考えを持つ有権者が少なくなく、憲法改正の主張など保守色の強い安倍をどう受け止めるかも不透明だ。

 仮に初村が敗れれば、永田町での安倍の求心力が低下する可能性もある。「落選して安倍さんの顔に泥を塗ったら、長崎がどんな目に遭うか…」。県連関係者は緊張感もにじませた。

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 22日昼。安倍と同じ場所で、国民民主党代表の玉木雄一郎も街頭に立った。安倍政権から続く「1強」が森友学園の問題を巡る公文書改ざんや、国会軽視の姿勢をもたらしたと指摘。「安倍、菅、岸田政権」とひとくくりし「都合の悪いことは説明しない。そんな政治は即刻やめてもらいましょう」と声を張った。

 前回、希望から出馬して初当選した九州唯一の国民前職、西岡秀子の応援に玉木が入るのは、10月に入り3度目だ。党の支持率は低迷し、西岡は比例復活は厳しい。元参院議長の父から継いだ地盤は「西岡党」と呼ばれ保守層にも浸透するが、自民を挙げた支援を受ける初村の戦いぶりは大きな脅威だ。

 そこで陣営は「政治の信頼」の争点化を狙う。「安倍政権以降に政治への信頼が失われた」と捉え、玉木は初村を「安倍政権の象徴」と断言。陣営関係者は「初村さんは安倍氏の『負のイメージ』も引きずっている」と話す。

 共産新人の安江綾子も、街頭などで政権交代の必要性を訴えている。=敬称略 (泉修平、岡部由佳里、松永圭造ウィリアム)

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 論戦が続く衆院選。注目の選挙区の攻防を追う。 (随時掲載)

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