対中人権外交「日本の役割重要」 グリーン駐日米臨時代理大使に聞く

 バイデン米大統領は中国との競争に力を入れる一方、「新たな冷戦は望まない」として競争が衝突に発展しないよう関係を適切に管理する考えを示した。米国が目指す対中関係とは何か。公務で福岡を訪れたレイモンド・グリーン駐日米国臨時代理大使に聞いた。 (聞き手は川原田健雄)

 -中国とどう向き合う?

 「中国へのアプローチの方法は三つある。まず協力できることは協力する。次に競争する分野では競争する。そして対立すべきところでは対立する。同盟国やパートナー国とともに中国との『違い』を管理したい」

 -習近平指導部が統一に強い意欲を示す台湾問題も米中間で管理できるか。

 「中国は台湾周辺で大規模な軍事的動きを見せ、外交、経済でも台湾に圧力を強めている。私たちは大きな懸念を抱いており、現状を一方的に変更する動きには対抗していく。同じ懸念を持つ日本やオーストラリアと協力し、台湾の国際機関への参画や経済・人的交流を後押ししたい」

 -バイデン政権は、日米豪印の協力枠組み「クアッド」や米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」など、中国をにらんだ連携を進めている。

 「参加国に共通するのは安全保障や政治、経済分野で“ルールに基づいた秩序”を掲げていることだ。逆に中国はそうした秩序を崩そうとしている。日本は米国が参加していない国際機関や米国以外との2国間関係でも、私たちと同じ価値観を推し進めてくれる。最も重要なパートナーだ」

 -日本には経済的関係の深い中国を刺激すると国益を損なうとの懸念もある。

 「米国も中国経済への関心は高く、米日間で大きな違いがあるとは思わない。ただ、中国は経済分野でも他国の先端技術を盗むなどしている。私たちは岸田文雄首相が経済安全保障担当相を置いたことに感謝している。両国でサプライチェーン(供給網)の安定や知的財産保護の連携を深めていきたい」

 -競争の先にどんな米中関係を目指すのか。競争で中国をルールに従わせることができるのか。

 「中国が責任あるプレーヤーとして国際システムの枠組みに入ることが必要だ。そうすれば中国が望む経済目標も達成できる。しかし、実際はルール重視とは反対に進んでおり、私たちは権利や利益を守るため競争せざるを得ない。米中には気候変動や北朝鮮の核・ミサイル問題といった共通の関心事がある。米国はドアを開いており、中国には協力すれば自らも利益があることを理解してほしい」

 -アフガニスタンの駐留米軍撤退を受け、台湾や香港では「自分たちもいつか米国に見捨てられるのでは」という不安が広がった。

 「アフガンとインド太平洋を比べることはできないが、私たちにとってインド太平洋は極めて重要で、関心の核になるものだ。この地域の同盟国とは安全保障条約を結び、何十年も続く強固な関係を築いている。その観点からも地域の人々には安心してもらいたい」

 -米中貿易や人権を巡り、経済制裁を続けるのか。

 「関税措置はトランプ前政権が課したものだが、中国側の改善が見られず、継続する方針だ。新疆ウイグル自治区や香港の民主派抑圧など中国の人権侵害は極めて深刻で、国際社会が声を高めないといけない」

 -制裁では中国を変えられないという指摘もある。

 「中国は自国の評判をとても気にする国だ。国際社会が声を高めれば中国の評判は落ちる。政府だけでなく、政府高官ら個人に制裁を科すことで人権侵害の政策をやめさせられる」

 -日本には人権外交に慎重論が根強い。

 「インド太平洋で存在感のある日本が公に中国の人権侵害を批判することは望ましい。中国の対応を建設的にするためにも、日本の役割は非常に重要だ」

 

 レイモンド・グリーン 国務省の上級外交官で、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の日本・東アジア経済担当部長や、台湾にある米国在台協会(AIT)台北事務所の副所長などを歴任。今年7月から現職。次期駐日大使の着任まで在日米国大使館トップの職務を担う。メリーランド大卒。50歳。

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