【私の視点】日本の難民政策を問う 彼らが〝いる〟ことを知って

「東京クルド」監督 日向史有さん

 「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれるクルド人。トルコやシリアなどの中東で暮らすが、差別や弾圧を逃れて故郷を離れる人も多い。日本にも約2千人いるとされる。難民認定申請を続けるクルド人を5年間取材し、ドキュメンタリー映画を作った。

 「2015年のシリア紛争を背景に欧州で難民危機が起き、難民に興味を持ち、日本クルド文化協会を訪問しました。そこで出会った10~20代の若者たちが『IS』(過激派組織『イスラム国』)と闘いたいと、真顔で言うのです。命からがら平和な日本に逃げてきたのに、どうして戦争に身を投じようとするのか。日本はそんなに生きづらい国なのか、知りたいと思ったのがきっかけです」

 映画は幼いころに日本に逃れた若者2人の“青春”を描く。難民申請が認められず「仮放免許可」で生きているが、在留資格がない「非正規滞在者」だ。働くことは禁止され、いつ入管施設に収容されるか分からない。

 「2人は通訳や芸能人になることを夢見ていましたが、かないません。立ちはだかるのが法律の壁です。入管職員からは『帰ればいい。他の国に行ってよ』と言われます。でも職員個人も強制送還という方法で問題を解決するという国の指針に沿って仕事しているので、責めることはできません。問われているのは、日本の難民政策で、ブラックボックスになっている入管の在り方だと思います。どれだけの期間収容されるか明確な基準がなく、入管の裁量で決められることが多過ぎます」

 日本は「難民鎖国」と揶揄(やゆ)される。認定率は1%に満たない。トルコ国籍のクルド人は、欧米諸国では多数が難民と認められているが、日本では一人も認定されていない。

 「かつて法務省研修教材には、『非友好国の国民の場合は難民認定は比較的自由に行えるが、友好国の場合はやや慎重にならざるを得ない』とあったようです。今はありませんが、入管政策の底流にあるような気がします。つまり日本にとってトルコは友好国ですから政策的に不認定にしているのかもしれません」

 「主人公の言葉が胸に突き刺さっています。1人は思うように夢を描けない毎日に『僕は誰にも必要とされない。ダニ以下だ』と漏らし、全8校の専門学校に落ちたもう1人に『希望を持て』と励ましたら、『希望って何ですか。拒んでいるのはそっち(日本)でしょ』と言われました。当時10代の若者たちがこんな絶望に陥るのか。そこまで追い詰める日本社会って。人の未来や可能性を奪うのはあまりにも残酷ではありませんか」

 岸田文雄首相は「多様性が尊重される社会」を掲げるが、衆院選の論戦は低調だ。

 「コロナ禍で日本でも分断が進んでいます。排除の目を向けると、必ず憎しみが返ってきます。共生をいきなり掲げても大き過ぎて実感がない。だったら半径5メートルの世界を想像することから始めてみませんか」

 「撮影後、1人は在留資格『定住者』を手にしました。もう1人は日本人の彼女ができました。彼らから伝言があります。『デモ活動など特別なことをしてほしいのではない。せめて自分たちのような人間が、日本に“いる”ことを知ってほしい』」 (聞き手・古川幸太郎)

 =おわり

 ひゅうが・ふみあり 1980年生まれ。ドキュメンタリージャパン所属。「東京クルド」は12月3日から9日まで福岡中洲大洋映画劇場(福岡市博多区)で公開される。

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