財源なき「ばらまき合戦」、財務次官の懸念現実に 識者「不誠実」

 31日投開票に向けて中盤戦に入った衆院選では、与野党が現金給付や減税など大規模な経済対策を競い合っている。新型コロナウイルス禍からの経済回復や暮らしを守る狙いだが、原資は借金頼み。歳入策や傷んだ財政の立て直しを巡る議論は聞こえてこない。財務省の事務方トップが懸念した通り「ばらまき合戦」の様相を呈している。

 自民党は岸田文雄首相が連日、街頭演説で「困っている方々への給付を用意する」と非正規労働者や子育て世帯への現金給付を唱える。公明党も18歳までの子どもに一律10万円の給付を掲げる。18日の党首討論会では記者から「大盤振る舞いの見本では」との質問も飛んだが、同党の山口那津男代表は「所得制限を設ければスピード感が劣る。どこで分けるか基準を巡っても不公平感が出る」と“一律”の意義を強調。この場で首相は「重なる部分もある」と公明案を支持した。

 野党の大盤振る舞いは、与党にひけを取らない。立憲民主党の枝野幸男代表は「100年に一度の危機を乗り切るため」と積極財政を主張し、低所得者への年12万円給付を掲げる。規模や対象は異なるが、共産党や国民民主党、れいわ新選組、社民党の各党も現金給付を公約する。日本維新の会は生活に必要なお金を給付する「ベーシックインカム」導入、「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」は期限付きの電子マネー配布を唱える。

 野党の多くは消費税の時限的な引き下げや廃止もセットで掲げ、財政への負荷は与党の提案より重い。

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 まるで予言通りの展開になっている。「バラマキ合戦はこれまで往々にして選挙のたびに繰り広げられてきました」-。財務省の矢野康治事務次官が8日発売の月刊誌「文芸春秋」への寄稿で発した懸念だ。各党の公約が出そろう前に書かれたもので矢野氏は自民党総裁選の論戦や野党側の主張を念頭にこう記した。

 「誰がいちばん景気のいいことを言えるか、他の人が思いつかない大盤振る舞いができるかを競っているかのよう」-。

 ばらまき合戦にくぎを刺した上で、悪化する日本の財政状況を列挙し、「このままでは日本は沈没してしまいます」と警告した。

 実際、日本財政はコロナ禍の歳出膨張で傷んだ。2020年度予算は総額175兆円まで膨らみ、過去最高を大きく更新。国と地方の長期債務残高は21年度末で1212兆円に達する見込み。国民1人当たりに換算すれば1千万円に迫る。

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 与野党は現金給付を含むコロナ禍の経済対策を国債発行で賄う方針だが、膨らむ借金をどう返していくのか。議論は乏しい。

 「結局、ツケが回ってくるのは私たち若い世代。誰がいつ返すのか議論がない」。各党首が顔をそろえた14日のTBS番組。大学生から出た率直な疑問に対し、首相は「経済を再生した上で財政(再建)」と述べるばかり。枝野氏は富裕層などへの増税に触れたが、具体的な返済の道筋は語らなかった。

 SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「大胆な歳出策のみを語るのは有権者に対して不誠実。歳出に見合った財源確保策や国債発行で将来どんな負担が生じるのか、痛みを含めて提示すべだ」と指摘する。

 (一ノ宮史成)

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