35人以下学級 現場に悲鳴も 「きめ細かい指導」 喜ばしいが… 増えぬ教員、多忙に拍車

「福岡市の35人以下学級」

 「学校現場が大変なことになっています」。そんな声が福岡市立小の教員から、あなたの特命取材班に届いた。教員の長時間労働の深刻さはここ数年、全国各地で問題になっている。今回のケースは市が独自に導入した「35人以下学級」が関係しているという。現状を取材した。

 「クラスが増えても教員の増員はなし。そのしわ寄せは教職員に行っているんです」。意見を寄せてくれたリカさん(50代)は語気を強めた。

 市は昨年度まで、小学1~4年は一律、中学1年は学校側の選択で35人学級を実施。本年度は小中の全学年に拡大した。市教育委員会によると、コロナ対策を念頭に「密」の回避が目的だったという。

 クラスが増えれば、その分だけ学級担任が必要になる。市は追加採用はせずに特定の教科だけを担当したり、少人数指導をしたりする担任外教員を充てて対応することにした。

 担任をしない教員が減ることで何が起きるのか。リカさんの勤務校では1人の学級担任が病休に入ったことから問題が表面化した。

 昨年度はフルタイムで働く担任外教員が3人いたが、うち2人は本年度は担任になった。病休した人の代わりを任せようにも、残る1人も急な担当換えは難しい。結局、教科の年間計画作りを担う教務主任が学級担任になった。「35人学級の導入は喜ばしいが、クラスが増えた分の教員は配置してもらわないと困る。産休や育休も含めて担任が休みに入るとき、学校外からなり手を探してもすぐには見つからない」

 市教委によると、35人学級の拡大と児童生徒数の増加に伴い、今春に小学校は計136学級、中学校は計177学級増えた。担任外教員は小学校で137人減の計264人、中学校は36人減の計81人となった。

 2学期が始まった8月27日現在、小学校は計4人、中学校は計7人の教員の欠員が生じた。市教委教職員第1課は「教員が見つかり次第、速やかに配置したい」としている。

 小学校教員の男性(40代)の学校では昨年度まで重要単元は教員2人で授業をすることがあった。今春から担任外教員が減り、1人で授業をする。「きめ細やかな指導が難しくなった」

 ある小学校長は「本人の体調や家族の介護で外した方がいい人がいても、担任にせざるを得なかった。負担が大きいとつぶれてしまう懸念がある」と話す。

 教科担任制を採用する中学校の現状はどうなっているのだろうか。

 チエさん(40代)が担当する学年はクラスが一つ増え、週に受け持つ授業が3~4時間増加した。授業の準備やテストの採点に充てていた空き時間がなくなり、1日6時間が全て授業になった教員もいる。

 病休に入る教員もいたが、カバーできる同僚はゼロ。生徒はしばらく自習を続けた。それも限界となり、教頭が授業をしていた時期もあったという。

 「目の前のことでアップアップ。十分指導ができず、満足に話を聞けない状況になっている」。毎日声を掛けていた生徒と話をする余裕がなくなり、その生徒は一時教室に顔を出さなくなった。「本当に申し訳なかった」と自らを責める。

 ただ、取材班が聞いたような声は市教委に届いていないようだ。教職員第1課は「学校現場から聞こえてくるのは、35人学級を継続してほしいという声」と説明する。例えば、1学年に児童生徒が80人いるケース。40人学級では2クラスだったのが、35人学級では26~27人の3クラスになる。「担任の負担は減り、きめ細かな指導につながっている」と話す。

 他の自治体はどうか。北九州市も本年度から小学校の全学年で35人学級を導入。3年生以下は既に実施しており、児童数の減少もあって今春に増えたのは32学級だった。教員の追加採用はせず、複数校を巡回したり、少人数指導をしたりする教員を担任に充てた。

 市教委教職員課は「担任が休みに入れば、教務主任や教頭が一時的に授業や担任をするケースもある」と明かす。負担を長期化しないため、できるだけ早く代わりの教員を探すという。

 福岡市教委は来年度の方針について「クラスの人数減による効果を検証し、コロナの感染動向も踏まえて検討する」(教職員第1課)とする。

 現場の教員は35人学級の意義を認めながら、早期の増員を求める。「誰がいつ倒れてもおかしくない」「心を病む同僚を見て、何かできたのではないかと自分も傷つく」。検討している間にも、教員の余力は失われつつあるようだった。

 (文中仮名)

 (四宮淳平、本田彩子)

小学校、25年度までに全学年35人に

 公立小学校の1学級の上限人数を40人から35人に引き下げる改正義務教育標準法は4月に施行された。小1は既に35人になっており、2021年度に小2を35人にした。その後は学年ごとに順次実施し、25年度に全学年で35人になる。

 衆参両院の委員会では「中学校の35人学級の検討を含め、学校の指導体制の構築に努める」との付帯決議が採択された。

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