沖縄基地問題 「聞く力」の真偽問われる

 今回の衆院選は争点として新型コロナ禍対策や経済政策などにスポットが当たっている。しかしその一方で忘れてはならないのが沖縄の米軍基地問題だ。沖縄という地域限定の争点と捉えるべきではない。

 前回衆院選からの4年間、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への県内移転を巡り、沖縄県民は重ねて「反対」の民意を示した。

 2018年の知事選では辺野古移設反対の玉城(たまき)デニー氏が当選、19年の県民投票は辺野古埋め立てへの反対票が投票の72%を占めた。それでも安倍晋三、菅義偉両政権は辺野古の埋め立て工事を強引に進めてきた。沖縄に対して「問答無用」の姿勢だったと言えよう。

 沖縄では16年に米軍の北部訓練場が部分返還された。だが依然として日本国内の米軍専用施設の7割超が沖縄に集中している。沖縄が過重な負担を強いられている現状に変化はない。

 沖縄県民の心情を逆なでする出来事も相次ぐ。今年8月には在沖縄米海兵隊が、人体への影響が指摘される有機フッ素化合物を含む汚水を下水道に放出した。日米で処分方法を検討している最中に独断で放出するやり方は横暴と言うほかない。

 また政府は昨年4月、辺野古埋め立ての土砂の採取候補地に県南部を加える方針を示した。沖縄戦の激戦地である南部の土砂を使えば戦没者の遺骨が混じる恐れがあるとして反発が広がり、沖縄県議会が遺骨混入の土砂の不使用を求める意見書を可決する事態に及んでいる。

 自民党の岸田文雄首相は「人の話を聞く」姿勢をアピールするが、国会答弁では「辺野古が唯一の解決策」と明言した。沖縄の声に耳を傾ける気構えがあるのか。声を聞いた上で、県民が納得する解決に導く調整力があるのか。早速問われている。

 一方、立憲民主、共産などの野党4党は「辺野古新基地建設の中止」を共通政策に盛り込んだ。ただ「沖縄の声を聞く」のは良いとしても「聞いてどう実現させるか」の現実味のある行程表を示さなければ、県民を失望させたかつての民主党の二の舞いになる。「聞く力」の真偽が試されるのは野党も同様だ。

 来年は沖縄の本土復帰から50年の節目だ。米中対立が激化し東アジア情勢が不安定となる中で、日本は地域の安定のためにどう動くのか、その戦略に沖縄をどう位置付けるか、大きな議論を始めなければならない。

 同時に、まだ残る本土と沖縄の経済格差を埋める道筋を付けることも大事である。衆院選をその出発点とするべきだ。

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