「ふぬけてんじゃねーよ」キング、意地の着地 #この一枚

 寸分の狂いもない着地に意地が詰まっていた。観客席からの拍手を一身に受け、内村は何度も拳を突き上げた。ちょうど3カ月前、東京五輪で演技を通しきれなかった無念を生まれ故郷で晴らした。「本当に会心の一撃という感じで出せた。あの感じは久々。僕の中ではリオの時に近かった」

 最後の鉄棒で逆転して個人総合連覇を達成した2016年リオデジャネイロ五輪に迫るという着地。「今まで散々こだわってきた着地がしっかり出てくれた。全てを一瞬で伝えられたうれしさがある」と感慨に浸った。

 冒頭、H難度の「ブレトシュナイダー」は、バーに近づきすぎ、直後の車輪で肘が曲がった。それでも、五輪で落下し、今大会予選では回避したひねり技に成功。大きなミスなくまとめ、完璧なラストにつなげた。

 東京で予選落ちした後は現実を受け入れられず、「信じられない」「夢じゃないよな」と周囲に漏らした。2日後から練習を始めて6種目を一通りこなしていたが、鉄棒を遠ざけることも多かった。特に、演技の要、ブレトシュナイダーは約20日間もできなかった。

 転機は五輪後初実戦だった9月の全日本シニア選手権。万全でなくても演技を通し切り、自信と自覚がよみがえった。

 「やっぱり日本代表としてやるって、半端な練習では駄目だと思った。覚悟がいる。『ふぬけてんじゃねーよ』と」

 体操への思いは変わらない。「相変わらず僕にとって最高以外にない。自分が自分であることを唯一証明できるもの」。メダルこそ逃したが、観衆を魅了し、日本代表の誇りを示した。

 (伊藤瀬里加)

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