【激戦区ルポ】立民ポスターに張り替える自民支持者…福岡5区、公認争い傷深く

 紅白の幕が下がるトラックの荷台に立つ自民党前職の原田義昭は、応援に駆け付けた首相で党総裁の岸田文雄を満面の笑みで迎え入れた。即席の舞台には「自民党公認」と大きく書かれた選挙カーが横付けされている。

 23日午後、福岡県大野城市の西鉄白木原駅前。約2千人の聴衆が歩道を埋め、舞台下には公認争いに敗れて出馬を断念した元自民県議の栗原渉が険しい表情でたたずむ。

 「今回は原田さんが公認候補として戦う。次回は栗原さんがこの5区で戦う」。岸田が演説の冒頭、公認争いで党が下した裁定を紹介し、栗原に右手を向けると拍手が起こった。

 首相自ら公認問題に触れざるを得なかった。

 1年以上にわたった自民分裂の対立は、公示の4日前に党本部が原田を公認して決着。「次回は栗原を公認」と記した裁定書の署名には岸田も党本部の総裁室で立ち会った。

 ただ、分裂回避で立憲民主党新人の堤かなめを引き離す計算だったが、報道各社の情勢調査は横一線。党本部関係者は「栗原支援者を取り込まないと勝てない。演説に急きょ栗原の名前を入れた」と明かす。

 異例とも言える首相の融和演出。それでも、分裂の傷痕は深い。

 原田は24日夕、同県筑紫野市で栗原を支援してきた県議や市議ら約20人と向き合った。「なんとか勝てるようにお願いします」と協力を求めたが、「まずは栗原さんとしっかり手を取り合って」「本当に勝ちたかったらもっと活動を」などと不満が噴出した。

 栗原の支援者には、除名をちらつかせて栗原に撤退を迫った党への不信感も渦巻く。栗原に推薦を出していた県農政連や、前回は原田を推薦した公明党は自主投票を決めた。自民県連幹部は「支持拡大より自民離れを引き留める戦いだ」と危機感は強い。

      ■

 「私は太宰府出身。父方は鬼滅の刃(やいば)でブームになった神社の神官でした」

 24日午後。筑紫野市の商業施設前でマイクを握った堤は地元色を前面に出し、応援に入った立民代表代行の蓮舫と並んで通行人に笑顔で手を振った。

 堤が出馬表明したのは約半年前。選挙区外の福岡市博多区の県議だったが、出身地の地の利を生かして支持者の開拓を図り、所属する県教職員組合の全面支援を受けて組織戦も展開する。

 解散前日の13日には共産党が立候補予定者を取り下げ、事実上の野党統一候補となった。自民分裂による「漁夫の利」に期待が高まるも、2日後には自民側も一本化にこぎ着けた。

 4年前の前回衆院選では、野党の2候補が獲得した得票を合わせても原田に約2300票及ばない。

 「無党派層や保守層への浸透が不可欠」(立民関係者)で、陣営がもくろむのが栗原支持者の「造反票」の取り込みだ。23日に同県朝倉市で開かれた個人演説会に栗原の支持者も参加。「栗原さんが引きずり降ろされたので堤さんを応援する」との申し出も増え、栗原のポスターを堤に張り替える動きも出ている。

 ただ、「栗原票がどこまでうちに来るのか読めない」と陣営関係者。「自民の底力は侮れない。本当の勝負はこれからだ」と手綱を引き締めた。

 =敬称略

(下村ゆかり、西田昌矢、金子晋輔)

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