「防災のハードは整ったが」津波避難タワー、訓練参加は1割未満

 宮崎県日向市の堀一方(ほりいっぽう)地区。日向灘が広がる雄大な自然には不釣り合いなコンクリートの塔がそびえ立っていた。高さ海抜12メートル。津波避難タワーだ。

 「東日本大震災、そして九州でも熊本地震と相次いだ。人ごとではない」

 片寄卓男区長(65)は危機感を訴えた。発生が懸念される南海トラフ地震では、最大15メートルの津波で最悪の場合、日向市の死者は5900人と予想される。

 タワーは5年前に完成した。200人を収容できる。県は2014年度から同様のタワーを県内に26基造り、高台へ上る道も整備中だ。22年度までに55億円の予算を投入する。

 「ハードはある程度整った。あとはソフト。安全に避難できる態勢づくりだ」。県の担当者は指摘した。堀一方地区では年1回、タワーに上る避難訓練をしているが、地区の人口約4600人のうち、昨夏の訓練に参加したのは320人。若者はわずかだ。今年から猛暑を避けて11月開催としたが、果たして参加者は増えるか。「住民の防災意識をどう高めればいいのか」。片寄さんにも解決策は見えていない。

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 31日投開票の衆院選で、防災を巡る論戦は新型コロナ対策などの陰に隠れがちだ。ただ、大規模災害が毎年のように起きる中、高齢者や障害者にどう安全に避難してもらうかといった具体的なテーマは、各地で大きな課題になっている。

 「災害は突然襲ってくる。私たちも自分や家族を守ることで精いっぱいだ」。8日、宮崎県日南市の飫肥(おび)地区であった民生委員の会合。谷口力男さん(74)は不安を口にした。飫肥地区は南海トラフ地震の津波は想定されていないが、日南市は震度7の恐れがある。

 この日の会合では市の担当者が、高齢者や障害者などの「要支援者」の避難を補助する「支援者」を決める必要があることなどを説明した。だが、若者が少なく支援者の選定は至難の業だ。足りなければ民生委員が担わざるを得ない。8月の豪雨では長崎県西海市で、1人暮らしのお年寄りに「怖いから来てほしい」と頼まれた70歳の民生委員が亡くなった。「民生委員も高齢化している。どこまでやれるか」。谷口さんは目を落とした。

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 「これでより多くの要支援者を救える」。福岡市中央区の高宮校区。西村光正自治協議会長(58)は言葉に力を込めた。市は今春、要支援者名簿に関連する条例を新設。災害対策基本法で名簿掲載は原則、本人の同意が必要だが、同意の返事がない場合でも「推定同意」として掲載できるようにした。校区の要支援者は推定同意の30人が加わり、130人に増えた。

 高宮校区は6年前、独自の防災組織を設立。名簿の要支援者宅に駆けつける「救出救護班」をつくった。班員を含む70人は昨年初めて安否確認の訓練をした。

 「防災組織が効果的に活動するには人間関係が欠かせない」。西村さんは痛感している。高宮校区は都心部に近く、住民の入れ替わりが激しい。このため、バーベキューや夏祭りなどの行事を開催し、住民同士の信頼を築いてきた。

 ただこの2年、コロナ禍でイベントがほとんどできなかった。災害時に住民の命を救うためにも、地域のつながりの再構築を迫られている。

 (小川俊一)

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