HKT48「元祖エース」兒玉遥の現在地 心の病乗り越え、演技の道へ 

 11月26日に10周年を迎えるアイドルグループ「HKT48」。1期生だった兒玉遥(25)は専用劇場のこけら落とし公演のセンターを務め、その後も「顔」として活躍したが、心身の不調で2019年6月、卒業公演を開くことなくグループを離れた。それから2年。今年6月、サプライズでHKTのステージに一夜だけ復帰し、ファンを喜ばせたのは記憶に新しい。現在は、映画や舞台を中心に精力的に活動する“元祖エース”。その現在地をたずね、当時の秘めた心の葛藤に耳を傾けた。 (古川泰裕)

 「夢みたいでした。タイムスリップしたのかなって思うくらい懐かしい。こんな光景を、また見られるんだ…って」

 3年半ぶりに加わったHKT48の円陣。隣にいるのはともに走り始めた仲間たち。胸に訪れた感情を言葉にするには、少しだけ時間がかかった。

 今年6月19日、マリンメッセ福岡で開催された宮脇咲良の卒業コンサートに一夜だけ復帰。センターで「大人列車」を歌い、宮脇に手を引かれステージの階段を上る姿は、劇場公演に戻ることなくグループを去った兒玉遥の3年半越しの卒業式とも言えた。

「心残り晴れた」6・19のステージ

 「自分にとっても、あの日があったから…。咲良の卒業コンサートだったけど、休養明けであいさつも何もしていないから、最後に残せて良かったなと思います。心残りが晴れた、じゃないですけど…。そういう舞台をつくってくれた咲ちゃんに感謝です」

 2011年11月26日、劇場デビューの日、ショートカットの15歳は最も注目を集める「センター」に立っていた。なぜ自分だったのか、「今でも不思議」だ。当時はグループ内の立ち位置が前後するたび一喜一憂した。今は一歩引いた場所から「グループの全体的なバランスやメンバーが生きるように、スタッフさんが考えてくれている」ととらえられるようになった。

 センターを後輩に譲ったシングル曲「スキ!スキ!スキップ!」と「メロンジュース」も「すごくフレッシュでかわいい」と思える。

2012年のインタビュー

 「当事者として直面している時はすごくつらいけど、それが青春というか。アイドルという世界ならではの、全力でやっているからこそ味わえる感情は、かけがえのないものなんだなって思う」

 25歳は笑って振り返る。でも、そうなるまで長い時間が必要だった。

絶えない競争「追い詰めすぎた、自分を」

 「追い詰めすぎていました、自分を」

 シングルが出るたびに選抜される歌唱メンバー、そして総選挙。15歳でデビューし、AKB48グループの一員として競争が絶えない環境に身を置き続けた。

 16年の総選挙では9位になり、ずっと夢だった「選抜」に入った。それでも、先輩たちと比べ自分にはずっと「何かが足りない」と思い込んでいた。

 「いつまでたっても自分の良さを認められないっていうか。迷っていました。好きでやってきたはずなのに、常に強制されているような気持ち。疲れていたんだと思います」

 スタッフに休養を勧められた。ステージの裏側で「頭が回っていない」と自分で感じることもあったが、受け入れなかった。

 「休みたくなかった。ステージにも出たかったし、(メディアに)露出されることが幸せだったから」

 休むことに怖さを覚える一方、感情が乱れ、劇場公演中に号泣したことも。見かねた尾崎充劇場支配人(当時)が「頼むから休んでくれ」と諭した。

 17年2月に医師の勧めもあって活動を休止した。診断結果は「そううつ病」だった。4月、NHKホール(東京)のコンサートで一度は復帰したが、本調子には程遠かった。公演の振り付けや立ち位置も泣きながら覚えるという状態。年末、今度は自ら休養を申し出た。

つらいことも、楽しいことも、いい思い出に

 休養中は自分のやりたいことをやった。祖母の家に泊まり込んで運転免許を取得し、海外に留学した。早く寝て、早く起きるという健康的な生活を送り、少しずつ心に栄養を摂取した。元気を取り戻し、あらためて、自分のやりたいことを問い直した。

 「やっぱり芸能にたどりつくんです。人の前に立ってパフォーマンスをして、誰かが笑顔になってくれること、人を楽しませることが好きだって気づいた。ここで諦めたら、もう絶対戻ることはないだろう。自分の中に、まだやりたいという気持ちがあるなら、やるしかない」

手で「10」のサインをつくる

 親友の2期生・谷真理佳(SKE48)の助言もあって再起を図った時、現在の所属事務所「エイベックス・アスナロ・カンパニー」(東京)から声がかかった。ただ、HKT48は卒業するしかないと感じた。

 「自分がいなくてもHKTはキラキラしていて。そこに戻るということは想像できなかった」

 19年6月、卒業と俳優転身を発表した。それから2年。演技を磨くことに力を注いだ。

 「アイドルをやって絶対に良かった。あんなに濃い7年は、この先ないって思う。つらいことも楽しいことも、全てが今となってはいい思い出になって残っているから。あの頃があったから、今も頑張れるって思える」

30代でも40代でも、いろんな役にチャレンジを

 10月29日、メインキャストとして出演した映画「徒桜」が公開される。福岡を舞台にしており、HKT卒業生の岡本尚子(2期生)も共演している。撮影から約1年半が過ぎ、俳優の道を歩み始めたばかりの頃の演技が少し気恥ずかしいが、「福岡の人には絶対喜んでもらえる作品になっているんじゃないかな」という。

 遠くから見守るHKTは心のエネルギー。奮闘する後輩たちにエールを送る。

 「アイドルとして活動している今を楽しみながら、周りの人に感謝して過ごしてほしい」

 そして、最後は兒玉遥の未来を見つめた。

 「歌うこともファッションも好きなので、枠にとらわれずに挑戦しながら活動していきたい。いい年の取り方をして、30代でも40代でも、いろんな役にチャレンジしたいですね」

 兒玉遥(こだま・はるか)1996年9月19日生まれの25歳。福岡県出身。2011年11月26日にHKT48の1期生としてデビュー。こけら落とし公演や初代チームHでセンター。シングルでは4枚目「控えめI love you!」から4作連続でセンター。16年のAKB48選抜総選挙で自己最高の9位。17年2月から活動休止、一時復帰するが同年12月から再度休養。ステージに戻ることなく19年6月にHKT48を卒業。その年の9月、新国立劇場(東京)などで上演された舞台「私に会いに来て」に出演し、本格的に俳優業をスタートした。舌足らずな話し方が特徴で「さ」行が「しゃ」行になりがち。愛称は「はるっぴ」。

※インタビュー全文を27日正午にアップします

福岡県の天気予報

PR

開催中

BANKO会展

  • 2021年11月20日(土) 〜 2021年11月30日(火)
  • こっぽーっとギャラリー

PR