恩恵続かないこと知っているのに…「脱原発依存」語られない城下町

 九州電力川内原発1号機の特別点検開始。18日、報道各社が一斉に報じた。「コロナで沈んだ街に明るいニュースだ」。同原発の地元、鹿児島県薩摩川内市で建築会社を営む古里公司さん(43)は胸をなで下ろした。

 原発の運転期間は法律で40年と定められ、原子力規制委員会の審査に通れば最長20年の延長が1度だけ認められる。川内原発は1号機が2024年7月、2号機は25年11月で40年。九電による特別点検は延長への最初のステップだ。2号機も来年2月に予定する。

 古里さんの会社は住宅の新築やリフォームを手がける。直接原発に絡む仕事はしていないが、それでも延長を待ち望む。原発がなければ、市全体の景気が落ち込むと身をもって実感しているからだ。

 11年の東京電力福島第1原発事故後に全て停止した国内の原発。川内原発は15年8月、新規制基準下では全国で最初に再稼働した。古里さんは個人の大工として生計を立てていたが、再稼働後に原発関係者や定期検査時に滞在する作業員向け民宿からの受注が増え、「仕事が3割忙しくなった」。

 その後も順調で、18年に会社を立ち上げた。大工仲間の中には福島の事故後、再稼働するまでの間に食べていけず転職した人もいたという。「この街は『原発依存』が現実なんです」。一方で、こう付け加えた。「20年の延長が終わった後の市の経済の在り方は、今から議論しないといけないですけどね」

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 12日午後。薩摩川内市の大型会議場「SSプラザせんだい」は閑散としていた。1月に開業したばかりだが、コロナ禍もあって利用は低迷。この日は中高生があちこちに陣取り、勉強を教え合っていた。

 SSプラザの整備は市の一大プロジェクトだ。JR川内駅に隣接し、千人収容のホールを完備。新幹線が停車する地の利を生かして交流人口を増やそうと建てられた。建設費は47億円。うち25億円は、原発関連の国の交付金が充てられた。

 ただ、市民の間では維持費負担の懸念がささやかれる。今後20年間で25億円が見込まれている。

 川内歴史資料館、国際交流センター、せんだい宇宙館、川内まごころ文学館…。原発の交付金を活用して建てられた市の施設だ。10年9月、当時の岩切秀雄市長は「箱ものはたくさん整備されたが、市の財政の圧迫につながっている」と議会で表明した。市はSSプラザを建設した一方、施設の統廃合や集約化を進める。

 市内の洋菓子製造販売会社社長、畑義康さん(48)は「市は原発の財源に甘えている面がある」と指摘する。同市を含む複数の自治体と連携して特産品を使った菓子を開発しているが、「薩摩川内市は売り込みの熱意が足りない」としばしば感じる。原発があるから市の経済は何とかなる-。「市の職員にそんな雰囲気がある」と打ち明ける。

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 「配達、気を付けてよ」。18日の正午前、佐賀県玄海町。九電玄海原発にほど近い民宿「要太郎」は、従業員総出で弁当の盛り付けに追われていた。おかみの溝上陽子さん(61)の威勢のいい声が飛ぶ。

 かつて宿泊客は原発関係がほとんどだった。福島事故後の原発停止で客は減少。溝上さんは弁当の販売を始めたり、宿泊サイトを活用したりと経営の「脱原発依存」を進めてきた。

 衆院選では原発の是非も争点の一つだ。だが、溝上さんには、推進派と反対派の感情的な対立ばかりが目に付き「中身のある論戦が少ない」ように映る。「原発の恩恵に感謝しつつも、それが永久に続かないことは、地元の誰もが知っている」。だからこそ、残り少ない選挙戦で、代わりの産業をどう育てるかを候補者には示してほしいと望んでいる。

 (湯之前八州)

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