【激戦区ルポ】「政治とカネ」激震地、自公に漂う不穏な空気 広島3区

 広島市安佐北区の山裾にある集落で23日昼、高齢の自民党支持者ら70人ほどが遊説に耳を傾けていた。マイクを握るのは公明党前職、国土交通相の斉藤鉄夫。「政治、与党への信頼を損なう事件が起きた。与党として反省しなくてはいけない」と終始、神妙な顔を崩さない。広島3区は、2019年参院選広島選挙区を巡る買収事件で実刑判決が確定した元法相、河井克行=自民を離党=の地盤だった。「政治とカネ」問題の衝撃はいまだ尾を引き、聴衆の男性(92)はこう漏らす。「あんな恥ずかしいこと。心の底では許せんが、流れに乗るしかない」

 「クリーンな政治」を掲げる公明は昨年11月、党勢拡大も視野に、比例中国ブロックで当選を重ねてきた斉藤の選挙区へのくら替えを断行した。広島は、首相で自民総裁の岸田文雄のお膝元でもある。発足から22年の長きにわたる自公連立の協力の「象徴区」(公明代表の山口那津男)として、絶対に落とすことが許されない戦いと化した。公示翌日の今月20日には岸田が入り、街頭であえて事件に触れて「自民党として、皆さまに心からおわびを申し上げなければならない」。斉藤と並び立った山口も、当選無効になった国会議員の歳費を返還させる法改正を約束し、信頼回復に努める低姿勢をアピールした。

 一枚岩に映る両党。だがその足元を、不穏な空気が覆っている。

 「自由民主党、公明党、与党統一候補です」。演説の際、斉藤は必ずそう自己紹介する。ピンクののぼり旗に「公明党」の3文字はなく、別の旗には「自民党推薦」と大書され、自民への心配りばかりが際立つ。

 河井の後釜に党所属の元県議を据えようとした自民県連の動きは、公明との全国での選挙協力を優先する党本部に退けられ、元県議は比例区に回らざるを得なかった。「本来は自民の候補者が立候補し、批判や叱責(しっせき)を頂きながら政治の信頼を回復しなければならない」。22日夜、斉藤の演説会に同席した元県議はこう悔しさを隠さず、自民県連幹部も「次の選挙では、こちらに地盤を返してもらう」と話す。

    ■                  

 対する立憲民主党の新人、ライアン真由美は同市安佐南区で23日、「大規模買収事件(の究明)を絶対終わらせてはいけないという電話が毎日、事務所にかかってくる」と声を張り上げた。21日に応援に駆け付けた立民代表の枝野幸男も、事件の再調査を否む岸田批判に照準を定めた。「忖度(そんたく)する総理大臣になっちゃった。ちゃんと再調査し、けじめをつけないと駄目だ」

 4月の参院広島選挙区再選挙では、立民などの推薦候補に政治刷新を求める追い風が吹き、自民新人を下した。ライアン陣営はその再現を狙うものの、神経をとがらせるのが、相手である斉藤の国交相就任だ。中山間地が多い広島3区は豪雨災害にたびたび見舞われ、斉藤は与党の政策実現力を前面に出して防災・減災強化を訴えている。有権者の関心の振り子は今、どこに向かうのか。立民の地方議員は「広島で『政治とカネ』問題は終わっていないと信じたい」と自らに言い聞かせる。

 報道各社の世論調査で勢いを示している日本維新の会の新人、瀬木寛親も「金権政治との決別」などを掲げて戦う。=敬称略

 (大坪拓也)

   ◇    ◇

大山  宏73    無 新

矢島 秀平29   ☆N 新

斉藤 鉄夫69    公 前

玉田 憲勲64    無 新

ライアン真由美58 ☆立 新

瀬木 寛親57   ☆維 新

※届け出順。敬称略。年齢は投票日現在。「☆」は比例代表との重複立候補

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